賃貸用不動産を信託して土地を残し、兄弟間のしこりを解消
土地を手放さず、遺産分割も平等に・・・今回の事例における家族の課題は次のとおりです。 Aさんは駅のすぐ前に100坪ほどの土地を持っており、長らくその土地を自宅兼店舗として利用していました。家族はAさんと、地元でAさんと一緒に飲食店を切り盛りする長男Bさん、東京で医師を開業する次男Cさん、三男Dさんの4人で、Aさんの配偶者は数年前に亡くなっています。 3年前に所有する土地に区画整理の話が持ち上がりました。駅前の一等地でもあり、低層の自宅兼用店…
広大地の評価に「矛盾」が生じた理由
「広大地」関連の矛盾が生じた裏事情とは?前回ご紹介した「広大地」に対する通達の矛盾の例ですが、実は、そのようになってしまったのには裏事情があります。 平成15年までの広大地の評価は、実際に道路になる割合を算出し、その割合を奥行価格補正率とする評価方法でした。つまり、開発道路の割合や間口、不整地などは評価額に反映していたのです。ところが当時、この広大地の評価をする税理士はほとんどいなかったのです。その理由は、「大変だから」です。 広大地の評…
「納税用地」として確保しておきたい土地のタイプとは?
納税用地として「想定しておくべき土地」とは?納税用地は、収益性が低く有効利用することは難しいものの、売却することによって相続税の納税資金を確保することが期待できる土地です。では、「納税用地」としてはどのような土地を想定しておけばよいのでしょうか。大前提として、必要に応じてすぐに売却できなければならないので、市街化区域内にあることが重要となります。市街化調整区域内の土地であっても売却が不可能というわけではありませんが、買い手が限定されてし…
信託の受益権を活用して「遺留分の主張」を緩和する方法
法定相続分、遺留分を理解して信託を上手に使う信託ではそもそも受益者を委託者が決めることができますし、さらに後継ぎ遺贈型の受益者連続信託を利用すれば、例えば、複数いる子どものうちで老後の面倒を見てくれた1人とその子孫だけにずっと遺産を承継していくというようなことも可能です。 しかし、ここで注意しなくてはいけないのは、法定相続人には遺留分があるということです。法定相続人、遺留分については以下で説明をしますが、もし、遺産のすべてを1人の子どもに…
相続税評価額に関する通達の「矛盾」とは?
さまざまな種類がある相続税評価額の「減額要因」前回まで、主だった相続税評価額の減価要因について通達の条文を含めて説明してきましたが、このほかにもたくさんの減価要因があります。適用される頻度が高いものについて触れておきましょう。通達に記載しているもの以外に、国税庁との質疑応答や過去の裁決等により、通達と同様に減価できる内容のものも含まれます。 ●私道……個人の土地で、特定の者の通行の用にのみ供されているもの●土地区画整理事業中の土地・・・…
市街化調整区域にある山林の処分方法
市街化調整区域の山林は特に処分が難しい市街化調整区域に所有している土地が山林の場合には、施設が建てにくいので、農地に比べて処分することが難しいかもしれません。たとえば、老人ホームを建てることを想定すると、山林という環境自体は自然が豊かであり高齢者にとって好ましいかもしれませんが、道路、上下水道等のインフラの整備が大きな課題となります。山林の多くは獣道のような自然道しかないので、老人ホームまでアクセスできるような自動車道を整えるだけでも、…
不動産管理を知らない妻と子のために信託とPMを利用
不動産の管理はプロに委託したい・・・今回の事例における家族の課題は次のとおりです。 ここで取り上げる方法は、不動産管理の知識、ノウハウのない妻、子どもでも安心して賃貸経営を続け、財産を散逸させることのないように、信託に加えPM(プロパティマネジメント)を利用した上で相続させるというものです。 Aさんは長年多数の自己所有不動産の賃貸経営を行ってきましたが、すでに75歳と高齢のため、そろそろ管理を他の者に委ねたいと考えています。しかし、Aさん…
市街化調整区域にある土地を処分する方法
市街化調整区域の土地は、介護・医療業者へ売却を以前、市街化調整区域にある土地の上には原則として建物を建てることはできないと述べましたが、例外もあります。 まず、老人ホームや病院など医療介護系の施設を建てることは認められています。そこで、市街化調整区域に所有する農地等は、医療法人や、介護業者などに購入をもちかけてみるとよいかもしれません。 老人ホームにしても病院にしても、建てるにはある程度の面積が必要となるので、まとまった土地であれば食指…
都市計画道路予定地の区域内にある土地の評価方法
制限のかかる「都市計画道路」に注意自治体のホームページなどでは、その地域の都市計画図を閲覧することができます。都市計画図には、土地の用途地域などさまざまな情報が記載されており、都市計画道路も記載されています。都市計画道路とは、都市計画法に基づいて、将来、道路を造る場所になっているところです。新たに道路を設置する場所もあれば、狭い道路の幅を広げるケースもあります。土地が都市計画道路の予定地にかかっている場合には、建築できる建物に制限があり…
子の世話にならないために任意後見契約と不動産信託を併用
妻や子どもの世話にはなりたくない・・・今回の事例における家族の課題は次のとおりです。 Aさんは、多数のマンションを所有し、賃貸経営をしています。Aさんには配偶者Bさんと3人の子どもCさん、Dさん、Eさんがいますが、いずれの子どもも独立して遠隔地に住んでいます。 Aさんは、最近体調がすぐれず、入退院を繰り返していました。ただ、今後、自分の判断能力(事理弁識能力)が不十分になったとしても、できるだけ妻Bさんの負担となりたくないと考えており、…
「物納戦略」を取らなかった場合の相続税負担とは?
1億円の現金がすべて相続税に!?今回もまた、前回、前々回の続きとなります。第7回で解説したCですが、相続した財産は貸宅地だけであり、相続税は6400万円です。したがって、Bと同様に現金一括払いは困難です。貸宅地のもたらす収益は50万円ですが、そこから税金が引かれると40万円になるでしょう。すると、20年たっても800万円しか所得が増えません。これでは延納も困難です。したがって、Cについては、相続した貸宅地を物納申請すれば、認められる可能性が非常に高いといえ…
接する道路が狭い土地の評価方法
幅が4メートルに満たない道路も少なくないが・・・狭い道路に接している土地の場合も、相続税評価額を減額できる可能性があります。 通常、土地が建築基準法上の道路に2メートル以上接していなければ建物を建てることができません。建築基準法上の道路は原則、幅が4メートル必要です。しかし、現在使われている道路の中にも昔のままの道路で、幅が4メートルに満たない道路も少なくありません。それらをすべて「建築基準法上の道路ではない」ということにしてしまうと、…
認知症になった場合の賃貸管理&生活の不安を解消する方法
賃貸経営と生活の両面で将来が不安今回の事例における家族の課題は次のとおりです。 この事例は賃貸不動産を所有する人が老後の不安を解消するために、不動産管理に関しては不動産信託、生活上の不安には任意後見契約を併用して備えようというものです。 Aさん(77歳)は賃貸不動産の経営をしています。今のところ、現役で経営に当たっていますが、今後、自分の判断能力が低下した場合に不動産の管理、収益の管理等をどうするかについて不安を抱いています。また、経営に…
具体例で見る「物納」が認められる余地とは?
配偶者には税額軽減の優遇措置あり前回のケースの続きです。これまでの話から計算すると、相続税の総額は、3億2000万円となりました。そして、それぞれの負担すべき相続税の額はまず、Aについては、法定相続分にしたがえば2分の1の1億6000万円になるように思えるでしょう。 もっとも、配偶者は「配偶者の税額軽減」という優遇措置を使うことができます。これは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した相続財産の額が「1億6000万円」か、あるいは「配偶者の…
評価減が認められる広大地の評価方法
有効面積が減少する広大地なら相続税も安くなる一戸建ての住宅が何軒も建築できるような大きな土地を広大地と呼びます。このような土地は、土地を区分して戸建て住宅を販売する開発業者が購入することになります。その際には、奥の区画までの道路を設置したり、ガス管や水道管の工事が必要になります。また造った道路は自治体への寄付となりますので、土地の有効面積はおおむね一割から二割減ってしまいます。このため、開発業者が土地を購入する際には、これらの費用を考慮…
任意後見制度と不動産信託を併せて利用する方法
任意後見制度は「制限行為能力者」をカバーする仕組み高齢になれば判断力が落ちてくることが往々にしてあります。場合によっては精神的な障害などによって著しく判断力を欠く状況に陥ることもあり得るでしょう。そのような場合に備え、自身がどんな状態、状況下にあっても自らの意思を貫き、不動産経営を続けるための方法として不動産信託と任意後見制度を併せて使う方法があります。 このやり方を解説する前に、まず任意後見制度とその前提となっている「制限行為能力者制…
事業を継ぐ子に事業用不動産と株式の受益権を取得させる方法
事業承継と相続対策の2つが課題今回の事例における家族の課題は次のとおりです。 この事例は事業経営者が、事業承継と相続対策という2つの問題を解決するために信託を利用するケースです。 Aさんは酒造品の老舗であるX株式会社(株式は全株Aさん所有)の3代目経営者です。Aさんは配偶者Bさんと長男Cさんと3人で家業を切り盛りしています。次男Dさんは会社の経営には一切関わっておらず、他の会社の会社員として勤務し、すでに独立しています。 Aさんは、事…
容積率が異なる二つ以上の地域にわたる土地の評価方法
容積率が低い部分については評価減が可能建物の床面積の合計が、その土地の地積に占める割合を容積率といい、すべての土地はその上限が定められています。 たとえば、土地が100平方メートルで容積率が200%であれば、建物の延べ床面積は200平方メートルまで建築可能ということになります。3階建てであれば、1階と2階と3階の床面積の合計が200平方メートルということです。容積率が高い地域のほうが延べ床面積の広い建物が建てられることになりますから、路…
「物納戦略」で貸宅地を処分する方法
物納は簡単には認めてもらえないが・・・貸宅地を効果的に処分する方法としては、物納制度を利用する〝物納戦略〞もあります。要は、相続税を支払うために、貸宅地を物納してしまうわけです。 もっとも、現在、物納はそう簡単には認めてもらえない状況にあります。したがって、ただ貸宅地を物納申請するだけでは、国に全く相手にしてもらえないでしょう。ことに、十分な現預金や収益力のある賃貸物件を持っているような場合には、まず間違いなく拒絶されるはずです。 たと…
子どものいない夫婦の財産を信託利用で社会貢献に使う方法
浪費癖のある弟に相続させたくない・・・今回の事例における家族の課題は次のとおりです。 Aさんは賃貸マンションを1棟保有しており、毎月100万円程度の賃料収入を得ています。Aさんには親族はおらず、死亡した場合、財産を相続するのは妻のBさんです。AさんとBさんとの間には子どもはおらず、Bさんの親族も弟であるCさんしかいません。ただ、浪費癖があるCさんとは、現在は絶縁状態にあります。 しかし、Aさんは自身の死亡後Bさんが相続した不動産が、Bさん…
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