人生100年時代、老後の暮らしには予期せぬ変化がつきものです。なかでも、年齢を重ねた仲のよい夫婦でも、別居せざるを得ない事態に直面することも珍しくないといいます。
もう限界、ごめんね…〈年金月12万円〉73歳妻、50年連れ添った〈年金月17万円〉78歳夫との別居を決めた「絶望的現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「家で看取る」つもりだった夫婦の現実

東京都内に暮らす上野隆さん(仮名・78歳)と妻の京子さん(仮名・73歳)は、50年連れ添ってきた夫婦です。元会社員の隆さんの年金は月17万円、京子さんも会社員時代の厚生年金を合わせて月12万円。夫婦で月29万円と、決して贅沢はできないものの、都内の持ち家で穏やかな日々を過ごしていました。

 

しかし、そんな日常が崩壊したのは、隆さんが75歳を迎えた頃。脳卒中で倒れた隆さん。幸い、一命は取り留めたものの、麻痺が残り、介助なしには日常生活が送れなくなりました。判定の結果は要介護3。以降は京子さんが食事の準備や着替え、排せつのサポートまですべてを担う「在宅介護」の生活が始まります。

 

介護サービスとしてデイサービスの利用も検討しましたが、経済的な制約から、週1〜2回にとどまりました。京子さん自身も高血圧や膝の痛みに悩まされており、日に日に心身の負担が積み重なっていきます。こうした「老老介護」の家庭は、今や全国で少なくありません。

 

厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』によると、要介護者と主な介護者がともに65歳以上の割合は63.5%。3年ごとに大規模調査が行われている同調査。老老介護の割合の推移をみていくと、2001年40.6%だったのが、2004年41.1%→2007年47.6%→2010年45.9%→2013年51.2%→2016年54.7%→2019年59.7%と、ほぼ右肩上がりで増え続けています。今や、要介護者がいる家庭で老老介護がスタンダードというのが現実です。

 

ある冬の夜、事件は起きました。貧血気味の京子さん、家のなかでバランスを崩して転倒。そのまま動けなくなってしまいました。朝になってようやく動けるようになり救急搬送。重度の腰の捻挫と診断され入院することになりました。「このままでは、私が先に倒れてしまう」。そのとき、初めて介護の限界を自覚したといいます。