配偶者には税額軽減の優遇措置あり
前回のケースの続きです。これまでの話から計算すると、相続税の総額は、3億2000万円となりました。そして、それぞれの負担すべき相続税の額はまず、Aについては、法定相続分にしたがえば2分の1の1億6000万円になるように思えるでしょう。
もっとも、配偶者は「配偶者の税額軽減」という優遇措置を使うことができます。これは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した相続財産の額が「1億6000万円」か、あるいは「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは、配偶者には相続税がかからないという制度です。
この制度が適用される結果、Aが実際に取得した相続財産の額は10億円の2分の1の5億
円であり、この額は配偶者法定相続分の2分の1以内ですから、相続税は課せられないことになります。
物納が認められる余地を確認する
次に、子どもであるB、Cの相続税です。なお、子どもについては「配偶者の税額軽減」のような優遇措置はありません。
まずBについては、30%を相続しているので、相続税もその割合に応じて負担することになります。つまり、9600万円(3億2000万円×0・3)を課税されることになります。
一方、Cは20%を相続しているので、6400万円(3億2 0 0 0万円×0・2)となります。
二人は現金を一銭も相続していませんし、前述のように普通のサラリーマンであることから、これらの相続税を現金で一括して納付することは難しいでしょう。
そこで、B、Cともに相続した土地による物納を検討することになります。
まず、Bが相続したアパートからは、先に述べたように年500万円のキャッシュフローがもたらされますが、おそらく100万円の所得税が課されることになるので実質的な収入は400万円ということになります。また、そのほかにもサラリーマンとしての収入が、年500万円あります。
すると税務署は、「これだけの所得があれば、現金での一括払いは無理だとしても、延納はできるのではないか。少なくとも、相続したアパートからの収入である400万円については延納に回せるだろう」 と判断するはずです。
延納になった場合、利息がつくので、Bの相続税の総支払額は、最終的に1億2000万円になるでしょう。 延納は最大で20年間認められているので、毎年400万円ずつ支払っていけばそのうち8000万円が延納で支払われる計算になります。
そしてこの場合、残額の1600万円(9600万円-8000万円)については、貸宅地の物納が認められる余地があるのです。