さまざまな種類がある相続税評価額の「減額要因」
前回まで、主だった相続税評価額の減価要因について通達の条文を含めて説明してきましたが、このほかにもたくさんの減価要因があります。適用される頻度が高いものについて触れておきましょう。
通達に記載しているもの以外に、国税庁との質疑応答や過去の裁決等により、通達と同様に減価できる内容のものも含まれます。
●私道……個人の土地で、特定の者の通行の用にのみ供されているもの
●土地区画整理事業中の土地・・・土地区画整理事業中で、今すぐ使用はできない土地
●高圧線下の土地・・・高圧線の下にある土地
●埋蔵包蔵地・・・地中に遺跡がある土地
●利用価値の著しく低下している土地……価格に影響を及ぼす以下のような要因の存在する土地
高低差・・・道路との高低差がある土地
墓地隣接地・・・となりに墓地がある土地
騒音・・・線路の横の土地や著しくうるさい工場に隣接している土地
狭小・・・土地が小さすぎて建築がしづらい土地
日照阻害・・・まったく日の当たらない土地
●水路を隔てている土地・・・直接道路に面しておらず、水路を隔てている土地
●庭内神祠の敷地・・・庭にあるお稲荷さんの土地など
●造成費・・・地目が宅地以外の場合で、宅地にするために造成が必要な土地
通達の「矛盾」を知っておく
宅地の評価をする際に評価を下げることが認められている通達の内容を見てきましたが、通達も完璧ではありません。実務を行う中で矛盾を感じることも少なくないのです。無道路地の矛盾については減価要因の中でも触れましたが、ここでは広大地の矛盾について考えてみましょう。
同じ800平方メートルの土地で図表1と2のような土地を比べてみましょう。いずれも道路をつけることによって六つの土地に分割できるとします。
図表1の土地に必要な道路は約80㎡ですが、図表2の土地では200㎡です。造成工事費は倍以上になります。当然ですが、この二つの土地の市場価格は変わるはずです。
ですが、現在の広大地の評価は、面積が同じであれば同じ評価額になります。間口の広い土地でも狭い土地でも、開発道路の割合が大きくても小さくても関係ありません。ですから、広大地の評価で得する人もいれば、損する人もいるのです。
つまり、広大地の評価は大ざっぱすぎて、市場価格を反映しきれていないのです。