前回は容積率が異なる二つ以上の地域にわたる土地の評価方法について考えました。今回は広い土地について見ていきましょう。

有効面積が減少する広大地なら相続税も安くなる

一戸建ての住宅が何軒も建築できるような大きな土地を広大地と呼びます。このような土地は、土地を区分して戸建て住宅を販売する開発業者が購入することになります。その際には、奥の区画までの道路を設置したり、ガス管や水道管の工事が必要になります。また造った道路は自治体への寄付となりますので、土地の有効面積はおおむね一割から二割減ってしまいます。


このため、開発業者が土地を購入する際には、これらの費用を考慮して、通常よりも安い単価でしか土地を購入しません。そこで、このような広い土地を評価する際にも相続税評価額の減額が認められています。


広大地の適用が受けられれば、適用していない評価と比べ評価額は4割から5割の減額が受けられます。広大地の減額は他の減額よりも効果が大きいので、広い土地の場合にはまず、広大地の適用が受けられないかを検討すべきでしょう。

 

広大地として認められるためには、主に四つの要件があります。

 

[広大地の要件]

 ⒈ 面積が原則500平方メートル以上(三大都市圏の場合)

 ⒉ 分譲する際に新しい道路を設置する必要があること

 ⒊ マンションや工場の用地として売買される土地でないこと

 ⒋ 相続時点で大型店舗などの商業施設等に有効利用されていないこと

 

面積要件は地域によって異なります。

 

東京、大阪、名古屋の三大都市圏では500平方メートル以上の面積があれば広大地の要件を満たしますが、三大都市圏以外では1000平方メートル以上が一般的です。また、自治体により条例で開発許可等の基準を400平方メートル以上にするなど、独自の基準を設けている場合もあります。その場合には、自治体の基準が広大地の適用基準の面積と考えられる場合もあります。


首都圏で500平方メートル以上の土地であったとしても、開発をする際に道路の新設を必要としない場合には、広大地の適用を受けられません。

 

図表1のように、土地に奥行きがあり、道路を新設しなければ奥の区画に出入りできない場合には、この要件を満たします。

 

図表1 道路の新設が必要なケース
図表1 道路の新設が必要なケース

 

 

しかし、図表2のように土地の奥行きがあまりなく、すべての区画に道路から直接出入りが可能な場合には、広大地の要件は満たさないので適用外となります。

図表2 道路の新設が不要なケース
図表2 道路の新設が不要なケース

 

 

周辺にマンションや大型店舗などが多い場所も適用が難しくなります。これらの地域ではマンションや大型店舗用地として売却できる可能性が高くなります。その場合には、通常の評価額程度で取引されることが多いので、広大地の適用は受けられません。相続した土地がマンションや大型店舗の敷地として利用されていた場合も同様です。

適用を受けると相続税評価額はどれだけ下がるのか?

広大地の適用が受けられると、

0・6 -0・05×(土地の面積÷1000㎡)

が広大地の補正率となり、この補正率を路線価に掛けて相続税評価額を計算することができます。

 

例えば、広大地の適用条件を満たす1000平方メートルの土地があった場合、計算式に当てはめると、補正率は0・55となります。

 

仮に路線価が20万円だとすると、

20万円×0・55(補正率)×1000㎡(面積)=11億円

となり、大幅な減価となります。


[通達]

24─4 その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条《定義》第12項に規定する開発行為(以下本項において「開発行為」という。)を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの( 22 ─2《大規模工場用地》に定める大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるものをいう。)を除く。以下「広大地」という。)の価額は、原則として、次に掲げる区分に従い、それぞれ次により計算した金額によって評価する。


(1)その広大地が路線価地域に所在する場合
その広大地の面する路線の路線価に、15《奥行価格補正》から20―5
《容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価》までの定めに代わるものとして上の算式により求めた広大地補正率を乗じて計算した価額にその広大地の地積を乗じて計算した金額


(2)その広大地が倍率地域に所在する場合
その広大地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額を14《路線価》に定める路線価として、右記(1)に準じて計算した金額


(注)
1 本項本文に定める「公共公益的施設用地」とは、都市計画法第4条《定義》第14項に規定する道路、公園等の公共施設の用に供される土地及び都市計画法施行令(昭和44年政令第158号)第27条に掲げる教育施設、医療施設等の公益的施設の用に供される土地(その他これらに準ずる施設で、開発行為の許可を受けるために必要とされる施設の用に供される土地を含む。)をいうものとする。
2 本項⑴の「その広大地の面する路線の路線価」は、その路線が2以上ある場合には、原則として、その広大地が面する路線の路線価のうち最も高いものとする。
3 本項によって評価する広大地は、5000平方メートル以下の地積のものとする。したがって、広大地補正率は0・35が下限となることに留意する。
4 本項⑴又は⑵により計算した価額が、その広大地を11《評価の方式》から21―2《倍率方式による評価》まで及び24―6《セットバックを必要とする宅地の評価》の定めにより評価した価額を上回る場合には、その広大地の価額は11から21―2まで及び24―6の定めによって評価することに留意する。

本連載は、2015年7月1日刊行の書籍『相続税から土地を守る生前対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税から土地を守る生前対策

相続税から土地を守る生前対策

下坂 泰弘

幻冬舎メディアコンサルティング

税制改正により、土地を失うリスクは飛躍的に増大しました。地主の方にとって相続税対策は深刻な問題です。そのため、さまざまな相続税対策をしている方も多いですが、その対策には大きなリスクを伴うものもあります。 相続税…

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