特集 法人の税金対策&財務改善

法人の税金対策&財務改善

同業種で同レベルの売り上げを上げていたとしても、会社の「儲け」については大きく異なってくるケースが少なくない。その要因はもちろん様々だが、「税金対策」と「財務改善」に対する経営者自身の意識と知識、そして実行力が高ければ高いほど、より「儲かる会社」になっているのではないだろうか。そこで本特集では、法人の税金対策と財務改善にスポットを当て、具体的な手法を含めて各種のアイデア、ノウハウをご紹介する。

社長に求められる「もっとも正しい判断」とは何か?
関根 威
戦いの真の相手を教えてくれる「経営計画書」「理事長、大変です! 今度あの事務所がこんなことを始めたようです。月々○○円でここまでやるようです。ホームページに書いてありました」 理事長とは私のことですが、社員からこんな報告を聞くと、10年前の私なら、あたふたして、何とかしなければと騒いでいた気がします。最近ではほとんど行かなくなりましたが、業界向けのセミナー。10年前は、セミナーに行くたびに、これからのトレンドはこっちか、今度はあっちかと方針…
消費税の「原則課税」と「簡易課税」――どちらが得なのか?
真下 和男
経費の見込みなども考慮し、慎重に選択する消費税の納税義務が生じたとして、原則と簡易のどちらも選択できる場合、どちらを採用したほうが「お得」かを考えていきましょう。仮にサービス業を営んでいる事業者を例にとります。サービス業の場合、簡易課税を選択するとみなし仕入率は50%ですから、この事業者の納税額は「消費者から預った消費税の半分」ということになります。 さて、この事業者の売上のうち70%を、給与などの不課税取引が占めていたとしましょう。すると…
ROEから見た「トラディッショナル企業」の実例とは?
佐藤 英志
ROE13.8%の大丸と8.5%の松坂屋HDが統合して誕生J.フロント リテイリングは、2007年9月に大丸と松坂屋が経営統合して誕生した持ち株会社である。まず統合直前の2007年8月末(中間期末)時点での、両社の経営指標をざっとチェックしてみよう。 大丸の総資産は3784億円で、内訳は現預金366億円に固定資産2319億円と、総資産の約6割を固定資産が占めている。中間時点の売上高は4090億円なので、366億円の現預金は、売上高1カ月分程度にしかならない。これはあまり潤沢とは言…
会社の5年後の未来を決める「事業の方向づけ」とは?
関根 威
なぜ「現状分析」が必要なのか?会社が厳しい状況になると、コンサルタントに助けを求めることが多いです。社員に「今の会社の問題点は何ですか」とヒアリングをして、外部環境の要素を加味し、「御社の問題点はここです」といった「現状分析」をやります。 しかし、現状を知れば知るほど、気持ちが暗くなるから改革の意欲がわかない。うすうすわかっていることをダメ出しされると、「できない理由の発表会」になりがちです。 では、現状分析はなぜ必要なのでしょうか。そ…
会計実務に慣れた人でもミスをしやすい「消費税」
真下 和男
特に混乱を生じやすい「仕入」「売上」の考え方消費税を理解するときに混乱を生じやすいのが、「仕入」「売上」の考え方です。会計学でいうところの「仕入」「売上」と、消費税法でいうところの「課税仕入」「課税売上」は内容が異なります。少しややこしいのですが、ここはぜひ理解してください。 たとえば、店舗などの固定資産を売却した際の売却代金は、消費税法では課税売上になります。店舗を1000万円で売ったら、単純にその1000万円が課税売上として計上され…
高い利益率の割にROEが低水準な「メタボ企業」の実例
佐藤 英志
資金効率が良くない理由は何か?養命酒製造は、養命酒の老舗メーカーで、創業は徳川幕府開幕前年の慶長7年(1602年)。ミネラルウオーターやみりんなども扱ってはいるが、今も全売上高の97%以上が養命酒の売上高で、連結子会社もなく、決算は単体決算という会社である。法人化は大正12年(1923年)で、昭和30年(1955年)の上場から半世紀以上が経過しているが、公募増資は1972年を最後に途絶えている。直近の2009年3月期の総資産は349億円で、純資産は311億円。自己資本比…
中小企業の経営を劇的に変える「経営計画書」の策定方法
関根 威
目標達成のための方法を考え、計画する会社は伸びる私は、経営にウルトラCは基本的にないと思っています。 コンサルタントに依頼して現状分析したり、経営セミナーなどに参加して、他の会社の成功事例や、やり方を表面的につまみ食いしても、会社の風土や考え方、価値観がそもそも違うのですから、ウルトラC級に会社が変わることはないように思うのです。得やすいものは失いやすく、得難いものは失いにくい。 しかし唯一、中小企業の経営をウルトラC級に変える例外がある…
税理士でさえも間違える「消費税のロジック」とは?
真下 和男
「分からないから」といって専門家に任せきりにしない2014年4月に消費税の税率が5%から8%になり、さらに2017年4月には10%へのアップが控えています。税率が上がるということは、それだけ経営への影響も大きくなるということ。会社が赤字でも消費税は納税しなくてはなりません。税率が8%に引き上がった際の、中小零細企業を中心に起きた動揺の大きさを思うと、来るべき再増税に備えて一刻も早く有効な対策を講じたいところです。 しかしながら、日本の消費…
ROEから見たエクセレント企業「ディー・エヌ・エー」の例
佐藤 英志
効率的な経営でROEを向上させたディー・エヌ・エーディー・エヌ・エーは、オークション&ショッピングサイト「ビッダーズ」、携帯電話用ゲームサイト「モバゲー」などの企画・運営会社である。ITバブル真っ盛りの1999年3月に、マッキンゼーのコンサルタントだった南場智子氏が設立した。2005年2月に東証マザーズに上場、2007年12月には東証一部に指定になった優良企業である。2009年3月期は連結売上高376億円に対し、営業利益が158億円。営業利益率は実に42%という高水準だ…
ROEから見る「トラディッショナル」「ICU行き」企業とは?
佐藤 英志
借金に頼って利益をあげる「トラディッショナル企業」前回に引き続き、ROEを軸に分類した「トラディッショナル」企業と「ICU」行き企業について見ていこう。 トラディッショナル企業は、現在最も該当数が多い。利益率はそれなり、資産効率もそれなりで、金融機関からの借金もそれなり、もしくはやや過多という状態だ。参入企業数の多い、建設、流通、アパレル、不動産開発といった伝統的な産業が該当しやすいので、トラディッショナル企業と呼びたい。トラディッショナル企…
なぜ融資を引き出すためには「事業計画」が重要となるのか?
関根 威
中小企業の信用補完制度のあり方が問題視されている!?中小企業の8割ぐらいが利用しているであろう信用保証協会。信用保証協会とは、ご存知の通り、基本的に各都道府県に設置されていて、大手に比べて信用力のない中小企業は、保証協会に保証料を払うことによって、銀行から融資を受けることができます。 借り手である中小企業が、業績悪化で借金の返済が不能になると、銀行は保証協会から代わりに残債の全額を受け取ります(これを代位弁済という。2…
ROEから見る「エクセレント企業」「メタボ企業」とは?
佐藤 英志
3つの指標が良好な「エクセレント企業」とは?ROE(当期純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ)の優良度と、成長性の視点で日本企業を大きく4つに分類したものが、以下の図である。すべて筆者の造語だが、それぞれを「エクセレント」「メタボ」「トラディッショナル」「ICU行き」と命名している。エクセレント企業とは、ROEを構成する3つの指標がともに良好な会社のことだ。当期純利益率はもちろんとして、総資産回転率と財務レバレッジの良好さは、成長性に対する高い意…
社長が理解しておくべき「営業キャッシュフロー」とは?
関根 威
銀行は「本業」で「いくら借金を返せるのか」を見る銀行員が貸出先の返済能力を見る場合に、「営業キャッシュフロー」という言葉をよく使います。営業キャッシュフローとは、その言葉の通り、営業活動によって得た1年間のキャッシュ(株の投資で得た配当や銀行金利、固定資産の購入など間接的にかかわったものを除いたもの)です。 銀行が、なぜこの営業キャッシュフローを口にするかといえば、本来の営業活動で、会社がどれだけ借金を返す能力が…
長期的な視点で考える「ROE」の向上策とは?
佐藤 英志
一時的なROE向上策の濫用は危険数字だけで言えば、ROEの値を向上させるのはそれほど難しくない。ROEは「当期純利益÷自己資本」で算出するため、とにかく分子(当期純利益)を増やせば値を引き上げることができる。逆に分子を増やせなくても、分母(自己資本)を減らすことができれば、ROEの値は一時的に改善されるだろう。だが、当期だけの利益を考えたり自己資本を減らしたりしてROE向上を図るのは諸刃の剣だ。経営陣が代わると、前経営陣を否定することで、新経営陣の経…
銀行から有利な条件を引き出すための「営業利益」の作り方
関根 威
銀行が見るのは損益計算書の「営業利益」損益計算書には、下記図表のように「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前利益」「税引後利益」の5つの利益が表示されており、それぞれに意味があります。 [図表]損益計算書①売上総利益・・・売上高から売上原価(商品の仕入れや製造、工事などの直接原価)を引いた利益 ②営業利益・・・売上総利益から販売費及び一般管理費を引いた利益 ③経常利益・・・営業利益から主に銀行の金利など財務活動によっ…
当期純利益率、総資産回転率、財務レバレッジの見方とは?
佐藤 英志
株主の投資効率を上げるにはレバレッジも必要前回触れた当期純利益率、総資産回転率、財務レバレッジについて、ひとつひとつ細かく見ていってみよう。 当期純利益率とは、売上高等の収益から原価や経費を差し引いて最終的に残る純利益が、売上高の何%に当たるのかをみるものだ。この数字が高ければ高いほど、利幅の高いビジネスをしていることになる。総資産回転率とは、総資産をどのくらい活用して売上を上げているのかをみるものだ。 そして財務レバレッジとは、総資産…
「お金を使う節税」を成功させる鉄則とは?
関根 威
利益の絶対額が足りないから「資金繰り」に忙殺される会社がお金を増やす方法は、基本的に以下の3つしかありません。 A 金融機関等から借り入れをする(負債増)B 投資家を募って増資をする(資本金増)C 事業で利益を出す(自己資本増) もう一度、貸借対照表(下図表)を見てみましょう。 [図表]貸借対照表会社がお金を増やすとは、左側の①資産の現金を増やすことです。前回説明したように、貸借対照表はバランスシートですから、左側の現金を増や…
企業財務の改善を図る目標値として「ROE」を選ぶ理由
佐藤 英志
「儲かっている会社」しか投資家は振り向かない企業には、投資家、債権者、顧客、取引先など、多くのステークホルダーが存在する。ではステークホルダー、特に金融機関や投資家から高い評価を受ける会社とはどのような会社なのか。法令を遵守する、社会的な責務をまっとうするなどといった基本はもちろんだが、ステークホルダーが重視しているのが財務諸表の内容であることは間違いない。数字の面で“良い会社”、つまり儲かっている会社でなければ、百戦錬磨の金融機関や投…
貸借対照表を「面積図」にして視覚的に内容を把握する方法
関根 威
「30%以上」が中小企業の自己資本比率の目標値貸借対照表は、損益計算書のように「いつからいつまで」といった期間の概念はなく、ある一定時点(通常は決算期末)で、会社にどんな資産(財産やお金をもらえる権利など)がいくらあって、その資産を所有するために、どこからお金をひっぱってきたかを表しています。 要は、損益計算書で利益を出すために、会社を設立してから今日まで、どんな資産に投下して、その投下した資産は、どこからお金を調達…
法人に利益を残すほうが結果的に節税となる理由とは?
小川 正人
今後も引き下げ傾向にある法人税の税率これまで日本の法人税の税率は、世界的に見ても非常に高率であるというイメージがありました。そのため、企業経営者の多くは自身や親族に対して役員報酬・給与を多く支給することで、法人税の節税に努めてきました。「会社に利益を残して高額の法人税を取られるくらいなら、自分たちの取り分を多くして所得税で支払う方がましだ」という考えからです。 実際、法人税と所得税の損得勘定をすれば、会社から個人に利益を移してしまう方が…

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