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低所得者装い脱税…「年金ゼロ」の80代夫婦
「年金なんて払うだけ損だと思ってました。でも、こんなことになるなんて……」
80代の佐々木夫妻(仮名)。かつては自営業で成功し、多くの収入を得ていたようです。ピーク時の資産額は富裕層クラスでしたが、確定申告の際に経費を多く計上することで、意図的に“低所得者”として扱われるようにしてきました。結果、国民年金の免除や減額を受けることができていたのです。老後は貯金と事業収入で暮らせばいいと考えていましたが、思わぬ経済状況の変化で資産はあっという間に減り、年金ゼロのまま80代に突入。気がつけば家賃滞納に追い込まれ、住む場所すら危うい状態に……。
年金なんて払うだけ損…経費を操作し続けた自営業者の末路
神戸市のファイナンシャルプランナー事務所に、一組の老夫婦が訪れました。
「家賃の支払いが難しくなって……なにかいい方法はありませんか?」
相談にやって来たのは、佐々木一郎さん(仮名/84歳)と妻の和子さん(仮名/81歳)。彼らは長年自営業者として飲食店を経営し、収入を得ていました。
「現役時代は、まあまあ儲かってましたよ。でも、年金なんて払うのはばからしいから、ずっと未納だったんです。減免の制度を知ってからは、確定申告のときにできる限り経費を増やして、所得を低くみせるようにしてたんです」
一郎さんはそう打ち明けました。
確定申告で所得を少なく申告し、前年の所得や世帯の状況などの複数の要素が条件を満たしていれば、国民年金の減額免除が受けられる可能性があります。事業の経費を多く計上し、あえて低所得者として扱われることで、年金の支払いを回避してきたのです。
日本年金機構のHPによると、国民年金保険料は下記の条件で免除を受けることが可能です。
全額免除
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
4分の3免除
88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
半額免除
128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
4分の1免除
168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
納付猶予制度
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
「結局、年金は1円も払わずに60歳まできたんですよ。でも、そのころは『別に問題ない』と思っていました。年金を払わなくても、自分で貯金や投資をしていれば大丈夫だろうって」
一時は事業の売上も順調で、老後資金に困ることはないと思っていたとのこと。ですが、税務署からの指摘を機に経済状況が変化。加えて物価上昇、予想以上の長寿化が、彼らの計算を崩壊させることになります。年金を受給するためには、保険料を納めた期間や免除された期間などを合算して10年以上が必要です。佐々木夫妻が免除されていた期間は5年程度で、年金の受給要件の払い込み機関を下回っていたのです。
