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ある日、テレビを見ていると…
杉本正子さん(仮名/75歳)は5年前に夫を亡くし、都心部から1時間ほどの住宅街で一人暮らしをしています。夫の遺族年金を含めた月18万円ほどの年金を受け取り、夫が残した庭の植木や家庭菜園、猫の世話を生きがいとしながら、高齢になっても元気に生活をしていました。
そんなある日、経済、世の中の情勢などを解説するテレビ番組で「日本の財政破綻の可能性とハイパーインフレ」というテーマで、昔からよく見かけるコメンテーターが解説しているのを目にします。
「日本の借金は1,000兆円を超え、政府は年々赤字を増やしている。日本円の価値が大暴落し、紙くずになってしまう……」
いまの日本にはこのような可能性があると聞いた杉本さんは「自分の貯金も、子供たちが受け継ぐころには紙くずになるのでは?」と不安に思うように。そして、それから数ヵ月後に知人から誘われ、海外の資産運用のセミナーに参加しました。
セミナーでは、テレビ番組で語られていたような日本円のリスクを耳にしました。「海外の税金が優遇された地域で運用するため、年利20%を狙える」というような投資商品の説明を受け、日本円で資産を持つことのリスクを確信した杉本さん。「資産を守るには海外投資しかない」と考えるようになり、セミナーで紹介された商品に自分の老後資金を預けることに決めました。
母の変化に気が付いた長男
セミナーに知人を招待し契約になれば、自分にも報酬がもらえるという仕組みに興味をもった杉本さんは、友人・知人数名にも声を掛けていきます。
そんな母の行動を知り、不安になった長男の隆幸さん(仮名/52歳)は母が騙されているのではと注意しました。しかし「テレビがウソつくわけないでしょう」「専門家の先生がこんなに本を出してるんだから」と聞く耳を持ちません。日本の財政危機を煽るような専門家の意見のみを持ち出し、頑なな様子です。
「なぜテレビなんかをそんなに信じるんだ……」隆幸さんは手を焼きます。

