年齢を重ねるごとに親子の関係は変わり、「子どもを心配する親」から「親を心配する子」の色が強くなっていきます。特に高齢の親がひとり暮らしをしていたら、子どもの心配は計り知れません。そこで選択肢になるのが「老人ホーム」です。しかし「親が老人ホームに入ってくれたから安心」というわけではないのです。
もう、生きているのも辛いだけ…〈年金16万円・79歳母〉、息子たちの勧めで「老人ホーム」入居…2カ月後に確信した「悲しい現実」 (※写真はイメージです/PIXTA)

老後の安心のために入居した老人ホーム

高齢化が進む日本において、老人ホームは重要な役割を担っています。しかし、入居者の生活の質という観点から見ると、必ずしもすべてがよい結果ばかりとはいえません。今回ご紹介する岡本和子さん(仮名・79歳)の事例は、老人ホーム入居の光と影を映し出しています。

 

30年ほど前に夫に先立たれた岡本さんは、息子たちが独立した後、長年、夫とともに建てた広い庭付きの一軒家に一人暮らしをしていました。日々の生活は年金16万円の範囲で細々と。夫が亡くなった際の保険金や、コツコツと積み立ててきた貯金はほとんど手つかず。決して無駄遣いなどすることなく、節約を心がけてきました。「一人だといろいろと不安なので。せめてお金の心配はしたくなかったんです」と岡本さんは語ります。

 

しかし、高齢による体力の衰えや、ちょっとした段差でつまずくことが増えたことで、「このまま一人で生活を続けるのは難しい」と感じるようになりました。そんな折、息子たちから「母さん、老人ホームに入居してみたら?」と勧められたといいます。

 

老人ホームに対し、あまり良い印象を持っていなかった岡本さんですが、息子が見せてくれた老人ホームは、岡本さんが抱いていたものとは180度違うもの。「老人ホームは、家族が面倒を見られなくなった人が入るところという、どこか暗いイメージがありました。でも息子が見せてくれた施設は明るくて。「毎日楽しく過ごせそう」、そんな期待感の持てるところでした」と岡本さんは振り返ります。

 

「早速、見学に行こう」という誘いに乗り、息子がピックアップしてくれた老人ホームを回った岡本さん。そのなかのひとつのホームが特に気に入ったといいます。「私、ガーデニングが趣味なのですが、そのホームには広い庭があり、レクリエーションでガーデニングをやっているというのが決め手でした。医療体制が充実しているのも安心材料でしたね」。さらに息子たちの家からも近く、「ここならすぐに遊びに行ける」といってくれたのも決め手のひとつになりました。「やっぱり、家族がすぐ近くにいるという安心感は特別なものですよね」と岡本さんは語ります。

 

【老人ホームを探すときに金額と立地以外で重視したもの】

1位「スタッフの質・雰囲気」32.4%

2位「すぐに入居できるか」32.2%

3位「医療体制」28.2%

4位「室内の清潔さ」25.1%

5位「入居者の雰囲気」24.2%

14位「レクリエーションの内容」14.5%

出所:株式会社LIFULL senior/LIFULL 介護『「介護施設入居実態調査 2025』【探し方編】