ほとんどの税理士が「開業医の相続」に対応できない理由
「相続に詳しい税理士」は少数派!?開業医が早めに相続対策を講じようとしても、それを的確に支援できる専門家は、実はほとんどいません。 個人資産にかかる相続税対策に加えて、特殊な医療法人の承継問題の対策を、同時に行われなければならないからです。おそらく多くの開業医の方が顧問税理士に日常的な税務を委託していると思いますが、相続税と医療法人の両方に精通した税理士は稀でしょう。 まず、「相続に詳しい税理士」自体が少数派です。なぜなら相続案件を経験す…
「開業医の相続」でトラブルが起こりやすい2つの理由
家庭裁判所の相談案件のうち、3件に1件は相続関係相続というのは、どこの家庭で起こってもトラブルになりがちです。 たとえば、遺族間で遺産配分の話し合いがまとまらずケンカになったり、親が多額の借金を抱えていたことが死後になって判明し、遺族が頭を抱えてしまったり、予想外に相続税が発生してしまい、納税のために自宅を売却しなければならなかったり……。 皆さんも一つや二つは、こうした相続トラブルを見聞きしたことがあるのではないでしょうか。家庭裁判所に…
公正証書遺言、秘密証書遺言のメリット・デメリットとは?
最もリスクの少ない「公正証書遺言」<公正証書遺言について> 公正証書遺言は、公証役場に行って公証人につくってもらう遺言書です。 主な作成のルールとしては、「証人2人以上の立ち会いのもと作成する」「公証人が遺言者から遺言の口述をもとに作成する」「遺言書の原本を公証人(公証役場)が保管する」などがあります。3種類ある遺言書の中で、最も安全性が高く、法的効力を発揮しやすいといわれています。 メリットとしては、次のようなものがあります。 ●遺言書…
「争族」を防ぐための自筆証書遺言のメリット・デメリット
「争族」防止の簡単からも見逃せない「遺言書の力」今回は、相続における基本のキである「遺言書」について説明します。遺言書は一般の相続でも有効なものですが、揉め事の起こりやすい開業医の相続では特に重要です。「たかが遺言書」と思うかもしれませんが、その効力は決して小さなものではありません。 遺言書は故人が遺族に自分の意思を伝える最後の手段です。逆にいえば、遺言書は相続人が故人の意思を汲み取るための大切な手がかりです。 「お父さんはどういう意図…
開業医が円満相続を実現するための「8つ」のミッション
被相続人の財産を洗い出し、いち早く対策を講じる前回までに、開業医6人のケースを紹介しました。これらの例からいえることは、円満な相続を叶えている開業医は、いち早く行動し次の8つのミッションをクリアしているということです。 ①財産の棚卸しと相続税の試算 被相続人の個人としての財産および事業としての財産をすべて洗い出し、どこにどんな財産があるのかを相続人にも分かるように整理しておく。そして、現時点での相続税額を試算し、税額の目安を把握する ②キ…
医療法人の「持分払戻請求」のリスクを回避した実例
副院長の持分が1億5000万円あることが判明・・・今回は、医療法人を持つFさんのケースです。 Fさん69歳[医療法人・内科] ●家族構成・・・Fさん(院長)、妻、長女(内科医・33歳)●相続財産・・・合計9億円(相続税評価額)●内訳・・・医療法人の持分、自宅の土地・建物、賃貸アパート、現預金 Fさんの医療法人は、院長のFさんと副院長のGさんで診療にあたっています。GさんはFさんの実弟です。医療法人の持分の割合は、Fさんが全体の2分の1、GさんとFさんの妻が4分…
遺留分の侵害による「争族の芽」を事前に摘み取る方法
遺言書に優先する「遺留分減殺請求」の権利Eさんのケースでは、病院の後継ぎである長男と、後継ぎでない他の兄弟姉妹とで財産の偏りが生じてしまい、長男が孤立しそうになった話です。 Eさん57歳[医療法人・精神科] ●家族構成・・・Eさん(院長)、妻、長男(医師・30歳)、次男(会社員・28歳)、長女(会社員・27歳)●相続財産・・・合計15億円(相続税評価額)●内訳・・・医療法人の持分、自宅の土地、建物、現預金 Eさんはかねてより「医療法人の持分、自宅の土…
医療法人の「持分評価」を引き下げてスムーズな承継を実現
「MS法人」の設立で医療法人の利益体質を解消医療法人の理事長であるDさんには、医学生の一人息子がいます。妻と息子以外に相続人はいないし、息子は医療法人を承継するつもりでいてくれるので、「うちは相続でトラブることはない」と思っていました。 Dさん55歳[医療法人・総合内科] ●家族構成・・・Dさん(院長)、妻、長男(医大生・24歳)●相続財産・・・合計20億円(相続税評価額)●内訳・・・医療法人の持分、自宅の土地、金融資産、現預金 Dさんは何事も早め…
医療法人の「持分対策」で不公平感のない相続を実現した例
「突然」相続が発生した場合に備えるCさんは人工透析病院(医療法人)の理事長です。地域に透析を受けられる病院が少なく、また、近年は診療報酬削減もあって業績は横ばいですが、透析患者自体が全国的に増加していることもあり、Cさんの病院経営は開業以来、安定した経営を保つことができています。 Cさん61歳[医療法人・人工透析] ●家族構成・・・Cさん(院長)、妻、長男(医師・32歳)、次男(医師・31歳)●相続財産・・・合計8億円(相続税評価額)●内訳・・・…
節税対策だけでは「円満相続」が実現できない理由
節税対策に力を入れすぎて承継対策が甘かったBさん今回紹介するのは、節税に関心が高く、以前から相続税対策に力を入れてきた個人開業医のBさんのケースです。 Bさん64歳[個人開業・皮膚科] ●家族構成・・・Bさん(院長)、妻、長男(会社員・34歳)、次男(学生・27歳)、長女(勤務医・31歳)●相続財産・・・合計3億円(相続税評価額)●内訳・・・自宅の土地、建物、クリニックの土地、建物、医療機器等、賃貸マンション一棟、現預金 64歳となったBさんは、かねて…
多額の現金を不動産に換えて「相続税の軽減」を実現した実例
相続財産のうち現預金が「約7割」を占めていたAさん開業医の相続では「相続税対策」と「医療法人の承継対策」が不可欠となります。 そこで本連載では、事前の計画的な「相続税対策」および「医療法人の承継対策」で、円満な相続を成し遂げた開業医たちの例をいくつか紹介しておきましょう。彼らの事例を参考にして、皆さん自身の相続にも役立てていただければと思います。 今回紹介するのは、ある地方都市で個人開業の内科クリニックを経営しているAさんのケースです。 A…
後継者への引き継ぎを円満に完了させる最後のステップとは?
会社のスタイルは引き継ぎ段階で経営者が決める下記の図表1の「引き継ぎ計画表の記入例」をもとに、自らの「引き継ぎ計画表」に5W2Hが余すところなく書き出せたなら、それに時間軸を加えて、計画表とします。図表2の「引き継ぎスケジュール例」を参考にしながら、スケジュールを立てましょう。 【図表1 引き継ぎ計画表の記入例】【図表2 引継ぎスケジュール】傾向としては、後継者タイプと自分のタイプが共通している場合には1か月程度、まったく異なる場合は半年ほどの…
引き継ぎを円滑にする「事業継承の5W2H」の明確化
タイプの異なる後継者に理念・文化の継承は難しいまずは、前回に引き続き、経営者タイプと職種タイプが異なる場合の最適な継承パターンと、その成功事例について見ていきます。 ●戦略型まったくタイプの異なる後継者に対し、自分の理念・文化の継承を望むのは極めて難しいものです。無理を押しつけて破たんするより、分社化して後継者に新たなステージを用意するほうが引き継ぎがうまくいくことがあります。子会社として分社化する場合、結局親会社の経営方針に縛られてし…
自分とまったく異なるタイプの後継者への引き継ぎ成功事例
具体的な「約束」を取り交わして「理念」を共有経営者タイプと職種タイプが異なる場合の引き継ぎでは、考え方も経営方針もまったく異なることが予想されるので、引き継ぎ後には大幅な路線変更をする可能性が高くなります。 新たな展開を望むならうってつけの人材ですが、もし自らが路線変更を望まないのであれば、後継者にはその核となる理念を十分に理解してもらわなければいけません。その場合、あいまいな表現では理念が共有できないので、具体的な約束を交わすこと。例…
「補佐官型の事業承継」を行う場合の成功事例
信頼できる補佐官に権限を与え、経営の暴走を防ぐ前回に引き続き、経営者タイプが異なるが職種タイプが同じ場合の最適な継承パターンと、その成功事例を見ていきます。 ●補佐官型たとえ経営者タイプが違ったとしても、職種タイプが同じであれば、補佐官型の事業継承も可能です。 基本的に、後継者が能力特化型である際によく用いられる手法ですが、職種タイプが同じであれば業務関連の引き継ぎはスムーズにいきやすいといえます。経営者タイプが異なることで、後継者は自…
自分と「経営者タイプが異なる後継者」への継承の成功事例
思考パターンの違いは経営方針に影響を与える職種タイプが同じでも経営者タイプが異なる場合は、思考パターンが違うことが経営方針にも影響を与えるので、売り上げの質が変わる可能性があります。 例えば、1対1の直接営業が得意な前経営者と代理店による拡販方針をよしとする後継者の場合では、同じ職種タイプでも利益率が変わることなどが考えられます。もし現在の会社の方針を維持してほしいと望むなら、古株の幹部社員なども交えて、今後の方針について事前にじっくり話…
「後見型・補佐官型」の事業引き継ぎの成功事例
経営者タイプが同じなら後見型の事業継承は可能前回に引き続き、経営者タイプと職種タイプを意識した最適な継承パターンと、その成功事例について見ていきます。 ●後見型後見型で後継者を育てる場合、時間がかかるため、短期間で事業継承を望むなら経営者タイプも職種タイプも一緒であるのがベストです。ただし、タイプが違ったとしても、あらかじめ時間をある程度かけて引き継いでいく前提であれば、その溝を埋めることができます。もし職種タイプが違ったとしても、経営…
「ワンマン型」経営者の事業引き継ぎの成功事例
職種タイプは経営に色濃くあらわれるだけに・・・経営者タイプが同じで職種タイプが異なる場合の引き継ぎでは、思考パターンは同じなので経営方針が大きく異なることはないでしょうが、前経営者の職種タイプは会社の経営に色濃くあらわれるもので、新たな経営者はその強みを生かせないことがあります。それが売り上げに影響する可能性もあるので、そこをどのように穴埋めするかを検討する必要があるでしょう。 例えば自分の職種タイプが直接営業職型、後継者が一般技術職型…
種類株式よりも利用しやすい「属人的株式」の特徴とは?
登記簿謄本に記載する必要がない「俗人的株式」前回紹介した種類株式のほかにも、ほとんど同じ機能を持った株式が存在します。属人的株式です。 種類株式は会社の登記簿謄本に記載されますので、それを見れば種類株式を活用していることは誰が見ても明らかです。一方で属人的株式は、登記をする必要がなく、登記簿を見ただけでは属人的株式を使っているかどうかはわかりません。属人的株式の大きな特徴は「人につく」ということでは、どこを見ればわかるのかといえば、定款…
右腕社員に任せる、後継者を育てるパターンの事業継承の事例
今までの路線をしっかり継承していく「匠型」前回に引き続き、経営者タイプと職種タイプが同じ場合の最適な継承パターンとその成功事例について見ていきます。 ●匠型大企業でよく見受けられる継承手法ですが、中小企業で選択されることもあります。自らの右腕といえる幹部社員に事業を継承し、今までの路線を継承していくという手法なので、経営者タイプと職種タイプが同じであれば申し分ありません。社内の根回しは必要になるでしょうが、後継者がすでに社内で跡継ぎと目…
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