前回に引き続き、3種類の遺言書それぞれのメリット・デメリットを紹介します。今回は、公正証書遺言、秘密証書遺言について見ていきましょう。

最もリスクの少ない「公正証書遺言」

<公正証書遺言について>

 

公正証書遺言は、公証役場に行って公証人につくってもらう遺言書です。

 

主な作成のルールとしては、「証人2人以上の立ち会いのもと作成する」「公証人が遺言者から遺言の口述をもとに作成する」「遺言書の原本を公証人(公証役場)が保管する」などがあります。3種類ある遺言書の中で、最も安全性が高く、法的効力を発揮しやすいといわれています。

 

メリットとしては、次のようなものがあります。

 

●遺言書のプロである公証人が作成してくれるので不備の心配がない。作成時に内容についてのアドバイスも受けられる

●公証役場が保管してくれるので、紛失や破棄、偽造や改ざん、隠匿などの心配がない(紛失の際は公証役場で再発行してもらえる)

●家庭裁判所で検認を受ける必要がない

●遺言書の存在と内容を明確にできる

●公証役場に行けない場合は、公証人が出張してくれる、など

 

デメリットとしては、次のようなものがあります。

 

●作成に時間と手間がかかる

●作成のための手数料が5000円~かかる

●遺言内容を公証人と証人2名に知られてしまう、など

遺言の内容を内緒にして作成できる「秘密証書遺言」

<秘密証書遺言について>

 

秘密証書遺言とは、遺言の内容を誰にも知られたくないときに内緒で作成する遺言書です。

 

作成時のルールとしては、「パソコンやワープロ、代筆などで書いてもよい」「署名は自筆でなければならない」「作成形式は自筆証書遺言と同じ」「証人2人以上の立ち会いのもと、公証役場に提出する(公証人に遺言書の提出日と遺言者の申述を封書に記載し、封書に遺言者本人、証人、公証人が署名押印して提出)」などがあります。

 

メリットとしては、次のようなものがあります。

 

●遺言内容を誰にも秘密で作成できる

●代筆やパソコン、ワープロで書いてもOK

●秘密証書としての不備があっても、自筆証書遺言として要件を満たしていれば、自筆証書遺言としての効力が認められる

●遺言書の存在を明確にできる、など

 

デメリットとしては、次のようなものがあります。

 

●家庭裁判所で検認を受けなければならない

●遺言書の保管は自分でするため、紛失、偽造や改ざん、破棄、隠匿などのリスクがある

●内容に不備があれば無効になる可能性がある

●手数料が1万1000円かかる、など

遺言書は「一度つくって終わり」ではない

自分の死後に遺言書の存在を明確にし、その内容を確実に実行してほしければ、やはり公正証書遺言が一番安心だと思います。

 

内容によって手数料は違ってきますし、自筆証書遺言などと比べると時間と手間と費用がかかりますが、少しのコストで安全性や確実性を買うと思えば、安いものではないでしょうか。

 

遺言書は相続対策がある程度整った時点で、早めに作成するのがいいと思います。書くのを後回しにしているうちに結局、書きそびれてしまうことがあるからです。また、何度かつくってみないと、書き忘れや気に入らない点などが出てくると後悔が残るからです。

 

遺言書は「一度つくって終わり」ではなく、資産の内容が変わったり、家族構成が変わったりしたタイミングで、内容を見直すことが大事です。

 

遺言書に「どこそこにある不動産は・・・」と書いてあるのに、実際にはすでに売却してしまっているとなると、かえって遺族を混乱させてしまいます。遺族が遺言書に従ってスムーズに相続を完遂できるように、最新の内容に更新しておくことを忘れないでください。

 

ちなみに、遺言書には「付言事項」というのがあります。付言事項は、本文の最後に付け添えるメッセージで、遺言者が家族にあてた想いなどを自由に記すことができます。

 

たとえば、「今までありがとう。幸せでした」と感謝の気持ちを綴ったり、「これからも家族仲よく、元気で暮らしてください」と遺族への要望を書いたり、「生前、○○さんにはお世話になった。その恩に報いるために△△を譲る。どうぞ受け取ってください」と財産分けの理由を述べるといった使い方をします。

 

最後のお別れの言葉ですから、思いのたけを率直に伝えると、きっと遺族は喜ぶに違いありません。

 

皆さんが思い残すことなくあの世に旅立て、また、遺族のほうでも皆さんを温かい気持ちであの世に見送り出せるとき、本当の意味での〝相続の終わり〟が来るのです。

本連載は、2014年11月29日刊行の書籍『開業医の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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藤城 健作

幻冬舎メディアコンサルティング

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