会社の業務や引退時期を念頭に置き、自社の事情に合わせて引き継ぎスケジュールを作成します。最終回は、その具体的なスケジュールの立て方について見ていきます。

会社のスタイルは引き継ぎ段階で経営者が決める

下記の図表1の「引き継ぎ計画表の記入例」をもとに、自らの「引き継ぎ計画表」に5W2Hが余すところなく書き出せたなら、それに時間軸を加えて、計画表とします。図表2の「引き継ぎスケジュール例」を参考にしながら、スケジュールを立てましょう。

 

【図表1 引き継ぎ計画表の記入例

【図表2 引継ぎスケジュール】

傾向としては、後継者タイプと自分のタイプが共通している場合には1か月程度、まったく異なる場合は半年ほどの時間がかかりますので、会社の業務や引退時期を念頭に、自社の事情に合わせてスケジュールを決定します。

 

例えば後継者のタイプが「営業型」、自分の性質が「管理型」などであった場合、本来なら後継者も管理型であるほうが引き継ぎしやすくなりますが、そうでない場合のほうが多くあります。今までの経営者が「管理型」であったなら、現在の会社自体も「管理型」の性質を持って運営されているわけです。もしそこで後継者が、自分の得意分野である「営業型」に会社を強引に転換させようとすると、必ず争いが起こります。そうさせないためには、引き継ぎの段階で経営者が差配することです。

 

筆者の経験上、後継者が不得意な分野であれば、その分野は他の人材に思い切って任せてしまうほうがうまくいくようです。例えば、後継者が「管理型」であり、会社が「営業型」である場合は、後継者は製品管理に主に注力し、営業のスペシャリストにある程度の権限を与えておく、というような手法です。

後継者とトラブルになる人は先に取り除いておく

もうひとつ、会社を継続させるための肝になることがあります。それは、引き継ぐ人の敵になりそうな人物がいれば、先手を打って取り除くことです。そもそも、後継者とその人との間にトラブルがある時点で、自らがいなくなった時の大きな火種を抱えていることになります。

 

トラブルの原因となっている社員に退職してもらうようにするには、金銭的に解決するのが一般的です。退職金をつけるか、今までのトラブルを挙げて減給処分にし退職に仕向けるか・・・。もしもめたくない場合は「一緒に引退しよう」といったり、分社化して「○年後までは働いてもらう」など期限を切るようにします。

 

また、この段階で自分の実務を見直し、顧客の引き継ぎや、登記の手続き、口座の引き継ぎなども準備しておきます。これらが済んだら、いよいよ引退です。

 

社内外に告知し、引き継ぎを開始します。経営者は、周囲が納得できるように手間を惜しまず説明を行いましょう。社内外の人と十分にコミュニケーションを重ね、それらを通して新たな経営者として認めてもらうよう、後継者にアドバイスします。また、後継者は思い上がることなく周囲から認めてもらうように努力をすることが大切です。

 

場合によっては、引退後もサポートが必要なことがあります。新体制が実際に始動したものの、後継者が頼りなかったり、思っていたように行動できなかったりということが起きたなら、補佐としての人材をつけなければいけません。

 

この際、例えば大番頭を取締役に据えるなどといった人事面での手続きが求められるケースもあり、なかなか労力がかかります。引き継ぎは、「自分の権限をどこまで譲るか」だけでなく「後継者の権限をどこまでに設定するか」もまた考えなければいけないということを、心にとめておいてください。

本連載は、2015年10月25日刊行の書籍『たった半年で次期社長を育てる方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった半年で次期社長を育てる方法

たった半年で次期社長を育てる方法

和田 哲幸

幻冬舎メディアコンサルティング

中小企業は今後10年間、本格的な代替わりの時期を迎えます。 帝国データバンクによると、日本の社長の平均年齢は2013年で58.9歳、1990年と比べて約5歳上昇しました。今後こうした社長たちが引退適齢期に突入します。もっと平…

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