前回は、公正証書遺言、秘密証書遺言について説明しました。今回は、「開業医の相続」でトラブルが起こりやすい2つの理由について見ていきましょう。

家庭裁判所の相談案件のうち、3件に1件は相続関係

相続というのは、どこの家庭で起こってもトラブルになりがちです。

 

たとえば、遺族間で遺産配分の話し合いがまとまらずケンカになったり、親が多額の借金を抱えていたことが死後になって判明し、遺族が頭を抱えてしまったり、予想外に相続税が発生してしまい、納税のために自宅を売却しなければならなかったり……。

 

皆さんも一つや二つは、こうした相続トラブルを見聞きしたことがあるのではないでしょうか。家庭裁判所に持ち込まれる相談案件のうち、3件に1件は相続関係の相談だといわれています。

 

しかも、その数は年々右肩上がりに増え続け、2012年度には家裁の相続相談件数は17万4494件にのぼっています(「司法統計年報」平成24年)。家裁に持ち込まれなかった揉め事まで含めると、その数は相当なものになるはずです。

「医療法人」ならではの特殊性とは?

ただでさえトラブルが起こりやすい相続で、さらに輪をかけてトラブルの危険性が高いのが、開業医の相続です。理由は大きく2つあります。1つは、キャッシュリッチになりがちなため、全体の相続財産が多額になり、莫大な相続税が課せられることです。最悪の場合、納税のために不動産の売却などを迫られ、せっかくの財産のほとんどを失ってしまうことになります。

 

もう1つは、医療法人の特殊性です。詳しくは後述しますが、多くの開業医が所有する医療法人の出資持分は、相続財産としての評価額が高くなりがちで、しかも換金性が低く後継者問題などにも絡むため、相続においては極めてやっかいな資産です。

 

開業医は、このような相続トラブルの種を抱えています。「とりあえず預貯金はあるから大丈夫だろう」とか「先代も開業医だったが相続で問題は起こらなかった。だから自分のときも問題ないはず」などという考えは、何の保証にもなりません。

 

開業医の多くは、体が動く限り地域のために医療に従事し、相続対策にまで意識が向かないまま、相続を迎えてしまうことになります。何も対策をせず無計画に相続を迎えてしまうと、それこそ病院の経営も、家族の絆も、破綻してしまいかねません。念入りに、周到に、相続への備えをしておかなければならないのです。

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    本連載は、2014年11月29日刊行の書籍『開業医の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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