今回は、副院長からの「持分の払戻請求」のリスクを回避し、医療法人を守る対策を講じた事例を見ていきます。

副院長の持分が1億5000万円あることが判明・・・

今回は、医療法人を持つFさんのケースです。

 

Fさん69歳[医療法人・内科]

 

●家族構成・・・Fさん(院長)、妻、長女(内科医・33歳)

●相続財産・・・合計9億円(相続税評価額)

●内訳・・・医療法人の持分、自宅の土地・建物、賃貸アパート、現預金

 

Fさんの医療法人は、院長のFさんと副院長のGさんで診療にあたっています。GさんはFさんの実弟です。医療法人の持分の割合は、Fさんが全体の2分の1、GさんとFさんの妻が4分の1ずつとなっていました。

 

Gさんは元々体に弱いところがあって、2~3年以内の引退をほのめかしています。Gさんが病院を辞めるとなると、持分の払戻請求を起こされたときに医療法人の存続が心配になります。

 

Fさんはさっそく相続税の試算を行いましたが、Gさんの持分はおよそ1億5000万円です。これをいきなり払戻請求されたら、医療法人は傾いてしまい、せっかく継ぐ予定になっている娘もいるのに途方に暮れてしまうとFさんは思いました。

払戻請求を主張される前に「退職金」で先手を取る

Fさんの相続対策のポイントは以下です。

 

①払戻請求権対策

 

対策1:払戻請求をされる前に、Gさんの持分を買い取る

対策2:持分を買い取るための原資として、Fさんに2億円の退職金を用意

 

②長女への承継対策

 

対策1:Fさんへの退職金で持分評価の下がったタイミングで持分を贈与する

対策2:長女の納税資金として給与額を上げておく

 

Fさんに今必要なのは、Gさんが払戻請求を主張する前に先手を取って対策しておくことです。

 

そこでFさんには翌年70歳で引退してもらうことにし、退職金として2億円を支払うことにしました。その持分評価が下がったタイミングで、Fさんは退職金から1億円を使って、Gさんの持分を買い取ることにします。

 

これによって払戻請求権行使によるトラブルリスクを回避できて、長女にリスクの種を残すことなく承継させることができるようになります。

 

また、退職金を放出して持分評価が下がっているので、その機を逃さず、長女へと持分の贈与も進めます。Fさんも年齢的にはいつ相続が発生してもおかしくないため、贈与は比較的高額で進めていきます。

 

すると贈与を受ける長女は贈与税の納付が必要になりますし、相続税の原資を貯めておくことも必要なので、長女の給与額は今のうちから最大限に引き上げておきます。

 

持分の払戻請求を起こされてしまうと、そこから打てる手は少ないので、突然払戻請求されるという事態が起こる前に対策を講じておくことができればベストです。Fさんのように、自分にとって有利な条件を揃えたタイミングで、持分の買い取りや贈与ができると問題は起こりにくくなるでしょう。

本連載は、2014年11月29日刊行の書籍『開業医の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

開業医の相続対策

開業医の相続対策

藤城 健作

幻冬舎メディアコンサルティング

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