(※写真はイメージです/PIXTA)

2023年家計調査「貯蓄・負債編」によれば、最も金融資産を保有する年代は70代以上で、全世代の金融資産合計の約27%を占め、金融資産のうち平均約18.7%を株式や投資信託などの有価証券で保有しています。インフレ対策として一部の資産を有価証券で保有するケースもあれば、資産承継を踏まえ多くの資産を有価証券で保有するケースもあるなど、保有状況は人によって異なりますが、もしそれらの資産を老後資金として活用することを想定されるなら、なんらかの対策をとっておかないと絵にかいた餅、使えない資産となる恐れも……。本記事ではAさんの事例とともに、老後の資産運用の落とし穴について、オフィスツクル代表の内田英子氏が解説します。

リタイアメント生活の準備を着々

Aさんはもうすぐ70歳です。ひとつの企業に長く勤め、取締役まで務めましたが、4年前に退職。現在は妻と2人、年金を受給しながら都内で暮らしています。

 

子どもは2人いましたが、長男は独身で京都に住んでいます。長女は近居しており孫もいますが、共働きである長女夫婦は最近マイホームを購入したこともあり、より一層多忙の様子。近くに暮らしているといっても会いに来るのは多くても月に2回程度。親子関係は良好といっても、近しい付き合いをしているわけではありませんでした。

 

Aさんは会社員時代、会社に勤務する傍らクリーニング店の経営も行っていました。近隣のホテルなどから受注も受けながら順調に事業を拡大していきました。しかし、10年前に2人の子どもが独立し定年退職が近づいてきたことを機に、Aさんは事業の売却を決断。リタイアメントの準備を進めることにしました。

 

リタイアメント生活の拠点はタワマン

Aさんが第二の人生としてのリタイアメント生活の拠点として選んだのは、エリア中心部にそびえたつタワーマンションでした。

 

数年前、タワマンに住む友人宅へ呼ばれた際に、「これが自宅なのか!」とAさんはたいそう驚きました。地方出身のAさんは、自宅が何十階もの高層階にあるタワマンに強い憧れを感じたのです。会社への通勤のしやすさやクリーニング店経営の兼ね合いなどの理由から、現役時代に購入することは叶わずでしたが、仕事を辞めたらこの夢を叶えようと、密かに計画していたのです。

 

妻に話すと、最初はあまり乗り気でなかったものの、内見で天井が高く、広いエントランスホール、共有スペースに並ぶイタリア製のソファに魅了され、すっかりその気になってくれました。

 

立地もよく生活も至便で、特にAさんが気に入ったのは部屋からの眺望です。街並みが一望でき、夜には華やかな夜景を毎日自宅にいながら楽しむことができます。Aさんはご満悦でした。

 

もともと社交的な性格だったAさんはタワマンを購入後、友人たちを集め、頻繁にホームパーティーを催すように。眺望を楽しみながら気兼ねしない仲間と美味しい料理に舌鼓を打つ……そんな優雅な暮らしを送ることができ、タワマンを買ってよかったと大満足していました。

 

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