【住宅投資】住宅ローン金利の上昇から23年にかけて住宅需要の低下は継続
実質GDPにおける住宅投資は、22年7~9月期が前期比年率▲26.8%と6期連続のマイナス成長となったほか、マイナス幅は20年4~6月期(▲27.4%)以来の水準となった。また、住宅着工件数(3ヵ月移動平均、3ヵ月前比、年率)は22年10月が▲8.0%(前月:▲38.7%)とマイナス幅が縮小したものの、先行指標である住宅着工許可件数(同)は▲31.5%(前月:▲28.7%)と大幅なマイナスが持続しているほか、マイナス幅が拡大していることから、10~12月期の住宅投資も大幅なマイナス成長となる可能性が高い(図表13)。
住宅需要の低下はこれまでの住宅価格の上昇に加え、FRBによる政策金利の大幅な引き上げを受けて住宅ローン金利が上昇したことで住宅ローン返済額が大幅に増加したことが大きい。実際に住宅ローン金利が22年初の3.3%から10月下旬から11月上旬にかけて7.1%台をつけた後、足元でも6%台半ばと大幅に上昇した(図表14)。また、住宅ローン金利の上昇に伴い米国抵当銀行協会(MBA)の住宅購入と借り換えを合わせた住宅ローン申請件数は足元で204近辺と21年1月下旬の980近辺から大幅に低下し、97年6月以来の水準に減少するなど住宅ローンに対する需要は大幅に低下している。
今後も住宅ローン金利の上昇継続が見込まれる中、住宅需要の低下は続こう。当研究所は実質GDPにおける住宅投資(前年比)が22年見込みの▲10.2%から23年は▲12.3%とマイナス幅が拡大した後、大幅なマイナスの反動に加え、金融緩和に転じることもあって24年は+3.1%とプラス成長に転じることを予想する。
【政府支出】ねじれ議会でバイデン政権が目指す政策の実現は困難
10月1日からの23年度予算の編成作業では、議会が本予算で合意できておらず、12月16日を期限とする暫定予算で凌ぐ状況が続いている。現在、年度末までの統合歳出法案について与野党で協議が行われているが、次期下院議長就任が有力視されている下院少数政党院内総務のマッカーシー議員が新議会となる来年1月までの暫定予算を要求するなど、共和党内で意見が分かれている。
一方、報道では統合歳出法案の予算規模については概ね前年度から1割以上の増額となる1.6~1.7兆ドルで与野党が合意しているものの、非国防関連予算などで与野党の隔たりが大きく、16日の期限までに合意するのは困難との見方が強まっている。このため、統合歳出法案で合意するための時間稼ぎとして年内を期限とする新たな暫定予算を可決するとの見方も出ているようだ。
来年以降の財政政策については、バイデン政権からは具体的な提案がでていないものの、インフレ削減法の審議過程で当初のビルドバックベター法案から削除された家計や教育、介護支援に加え、企業や富裕層に対する課税強化の実現を目指すとみられる。また、下院共和党はインフレ高進をバイデン政権による大規模な歳出拡大としており、インフレ抑制のためにも社会保障などの歳出削減を目指す方針を明確にしている。
しかしながら、新議会がねじれ議会となることで与野党の対立からこれらの政策が実現する可能性は低いとみられる。さらに、来年以降景気後退が深刻化した場合に新型コロナの感染が拡大した時期にみられたような超党派による迅速な経済対策も、24年の大統領選挙を控えて共和党との合意が得難いとみられることから実現の可能性は低いだろう。
いずれにせよ歳出や歳入に対する現行法からの大幅な政策変更の可能性は低いだろう。
一方、新議会で下院議長就任が有力視される共和党のマッカーシー議員は自分たちが要求する政策実現のために、連邦債務上限の引上げを政治問題化することを明言している。米国では連邦債務残高の上限が法律で定められており、現在は31.4兆ドルとなっている(図表15)。債務残高は23年夏場には債務上限に抵触するとみられており、それまでに議会が債務上限の引上げで合意できない場合、米国債がデフォルトする可能性があるため、経済への影響が大きい。
与野党ともにデフォルトは望んでおらず、実際に米国債がデフォルトする可能性は低い。しかしながら、与野党の対立が激化し、債務上限の引上げリスクが高まると金融市場が不安定化を通して米経済にネガティブに影響しよう。
当研究所は実質GDPにおける政府支出(前年比)予想について、大幅な歳出や歳入の拡大は見込めないものの、これまで実施した経済対策効果の剥落で大幅な歳出減少となった22年の反動もあって、23年は+1.2%、24年が+1.2%と小幅ながらプラス成長となろう。
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