(※写真はイメージです/PIXTA)

定年後、都市部を離れて地方の一戸建てでゆっくり暮らしたいと考える人は少なくありません。広い庭、静かな環境、住宅費の安さ。理想的に見える一方で、年齢を重ねるにつれ、家の維持管理や買い物、通院、近所付き合いが負担になることもあります。離れて暮らす子どもがその変化に気づくのは、思ったより遅い場合があります。

「田舎でのんびり暮らす」はず…息子が感じた実家の異変

東京都内で働く会社員の亮介さん(仮名・42歳)は、8ヵ月ぶりに両親の暮らす実家を訪れました。

 

父の修さん(仮名・69歳)と母の幸子さん(仮名・67歳)は、数年前に定年を機に地方の一戸建てへ移住しました。夫婦の年金収入は月22万円ほど。住宅ローンはなく、当初は「都会より生活費も抑えられる」と話していました。

 

「父は庭いじりをしたい、母は静かな場所で暮らしたいと言っていました。自分も、二人が元気ならいいと思っていたんです」

 

移住直後、両親は楽しそうでした。家庭菜園を始め、近所の直売所で野菜を買い、写真を送ってくることもありました。

 

ところが、半年ほど経つと連絡の頻度が少しずつ減っていきます。

 

「最近どう?」とLINEを送ると、母からは短く返事が来ました。

 

「元気だよ。ちょっと散らかってるけど」

 

亮介さんは、その言葉を深く受け止めていませんでした。年金生活でのんびりしているのだろう、地方の家は広いから物も増えるのだろう。その程度に考えていたといいます。

 

しかし、実際に玄関を開けた瞬間、亮介さんは息をのみました。

 

廊下には段ボールが積み上がり、使い終わった新聞や通販の空き箱がそのまま置かれていました。台所には洗っていない食器が残り、冷蔵庫には期限切れの食品もありました。

 

「ちょっと散らかってるだけだよ」

 

母はそう笑いましたが、亮介さんにはそう見えませんでした。

 

庭も荒れていました。父が楽しみにしていた家庭菜園は雑草に覆われ、物置の前には使わなくなった園芸用品が放置されています。

 

「父は几帳面な人でした。母もきれい好きだったので、これは普通じゃないと思いました」

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、消費支出が月約26.4万円、可処分所得が月約22.2万円で、平均では毎月赤字となっています。夫婦も、年金だけで余裕があるわけではなく、家の修繕や車の維持費を考えると、少しずつ貯蓄を取り崩していました。

 

生活費だけでなく、身体的な負担も増えていました。買い物には車で20分。病院まではさらに遠く、父が腰を痛めてからは外出も減っていたのです。

 

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