相続させたくない相手に「遺留分を渡さなくていい方法」は存在するか (※写真はイメージです/PIXTA)

配偶者・子・直系尊属といった法定相続人には、相続において最低限受け取ることのできる「遺留分」が存在します。では被相続人となる方が「遺留分権利者に、どうしても遺留分を渡したくない」という場合、「渡さない」または「渡す額を少なくする」方法は存在するのでしょうか。響き税理士法人の川崎朝輝氏が解説していきます。

遺留分とは、一定の法定相続人が「最低限受け取れる遺産取得分」

人が亡くなり相続が発生すると、法定相続分に則って、もしくは遺言書に沿って遺産が分割されることになります。

 

「法定相続分通りに相続されては困る」という方は遺言書を作成する必要があるわけですが、遺言書に書いたことがなんでも通るわけでもありません。配偶者・子・直系尊属といった法定相続人には、最低限受け取ることのできる遺産取得分、遺留分が存在します。

 

つまり、亡くなった方に配偶者と子がいた場合、その2名は法定相続人かつ遺留分権利者となるため、「配偶者に遺産を全額渡す」と遺言に記載すれば子の遺留分を侵害したことになるのです。子は主張した場合(=遺留分侵害額請求)、必ず一定の財産を受け取ることができます。

 

配偶者・子・直系尊属のほか、子の代襲相続者も遺留分を請求することが可能です。兄弟姉妹は法定相続人にはなり得ますが遺留分権利者になることはありません。

 

この権利には時効があります。期限は以下の通りです。

 

  • 相続の開始および遺留分の侵害を知った日から1年以内
  • 相続開始から10年以内(相続の開始を知らなかった場合)

 

 

さて、とはいえ、ご家庭の事情で「どうしても遺留分権利者に、遺留分すら渡したくない」方もいらっしゃるでしょう。「遺留分を渡さない」もしくは「渡す額を少なくする」ことはできるのでしょうか。

遺留分を「渡さない」ことは原則難しい

結論から言えば、遺留分を請求されても一切渡さないということは原則できません。

 

しかし遺留分は請求されない限り渡す必要がないものです。そのため、遺留分を請求しないよう説得する、あるいは遺言書の付言事項で遺留分を行使しないよう要請するという策が考えられます。ただし付言事項に法的効力はなく、実際に請求をするかどうかは遺留分権利者本人の判断に委ねられます。

 

相続発生前に遺留分を放棄することも、推定相続人が家庭裁判所で許可を受けなければなりません。また遺留分の生前放棄は、「遺留分を放棄すべき合理的な理由がある」「遺留分権利者に相当な対価が与えられている」といった合理的な理由がある場合にしか認められないものです。

 

ただし遺留分は相続人のみに認められる権利なので、相続欠格者や相続人廃除の扱いを受けた者、相続放棄をした者は遺留分権利者になることができません。

 

しかし欠格・廃除の扱いを受けた場合、代襲相続で子(子が亡くなっている場合には孫)に相続権・遺留分が移るため、子らにも渡したくないということであれば注意が必要です。

 

 

渡さなければならない遺留分を「減らす」ことは可能

そこで、現実的に可能な遺留分を減らす手段について考えてみましょう。

 

養子縁組で法定相続割合を小さくする

 

まずは、法定相続割合を小さくする策が考えられます。

 

養子縁組をして法定相続人の数を増やすことで、各法定相続人の相続分および遺留分の額を減らすことが可能です。たとえば、法定相続人が子2人であったところ孫1人と養子縁組をすれば、法定相続割合は1/2から1/3へ小さくなります。

 

生命保険を活用し遺産額を減らす

 

また、そもそも遺産を減らしてしまうというのもひとつの手です。遺産額が減ればおのずと遺留分額も減ることになります。

 

生命保険に加入し資金を振り込めば、財産の種類が金融資産から変更されます。死亡保険金は原則として受取人の固有の財産とされ、相続財産には含められないため遺産額を減らすことになります。

 

しかし、一部の相続人が受け取る生命保険金額があまりにも多額である場合、特別受益として遺産に含められる可能性があります。

 

生前贈与をおこなうことで遺産額を減らす

 

財産を渡しておきたい相手には、生前に贈与しておき、結果的に遺産額を減らすという対策も考えられます。

 

しかし相続が開始した1年以内の贈与、さらに相手が相続人であれば10年以内の贈与は遺留分の計算に含まれることになります。それよりも前に生前贈与をしておかなければなりません。

 

10年というと長い期間であるため、生前贈与を受けていた法定相続人が相続放棄をすることで、遺留分の計算に含まれる期間を1年にすることも可能ではあります。とはいえ「遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与した」場合にはこの対策は無効化し、1年以上遡って遺留分の対象とされるため注意が必要です。

 

また、相続放棄をすれば法定相続人が減り、法定相続割合が大きくなることにもなるため結果的に遺留分を減らすことに繋がらない可能性もあります。

 

生前贈与も遺留分を減らすために適した策とはいえませんが、おこなう際にはひとまず専門の税理士へ相談することをおすすめします。

 

 

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川崎 朝輝

響き税理士法人 税理士

 

 

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響き税理士法人 税理士

資格の大原 税理士講座の相続税法講師として、教室や映像配信の講義を担当し4年勤務。

その後、税理士法人山田&パートナーズ東京本社で約7年半勤務し、マネージャーとして相続・事業承継案件を中心に担当。

現在、響き税理士法人にて横浜を中心に、相続税専門の税理士として相続税申告のサポートを行っております。



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