(※写真はイメージです/PIXTA)

相続税の税務調査の項目の中でも、現金・預貯金等は申告漏れのある相続財産として最も多く指摘される項目となっています。税務調査の対象となったり、追徴課税を求められたりすることが多い預金の引き出し。今回は「相続発生直前の預金の引き出しをどのように処理すべきなのか」、税理士法人ブライト相続・代表社員税理士の竹下祐史氏がわかりやすく解説していきます。

相続前の預金引き出し事例

まず、相続が起きる直前に引き出しが起こる例をいくつか挙げます。

 

●入院費用の精算

●老人ホームの費用精算

●自宅の修繕

●マンション管理費

●水道光熱費

 

これらは、生活費の一部として必要な項目となります。

 

他にも、被相続人がお金の管理ができない状態になっており、家族に任せるために、【相続人の口座への振替】という事例もあります。

 

また被相続人の死後、口座が凍結されることへの不安から、【緊急の必要資金に備えるために、お金を引き出して手許現金として保有しておく】という方も多くいらっしゃいます。

 

お金を引き出すことだけをもって、税務署が問題視するわけではありません。しかし、直前の引き出しを税務署は注目しているため、正しい申告処理を行う必要があります。

税務調査で「否認されてしまった」事例

自宅に保管しようと2,200万円を引き出したAさん。しかし、翌日に急死してしまいます。

 

相続人がこの直前の引き出しを計上せずに申告したため、税務署は否認し、その分の相続税と延滞税・加算税といったペナルティを求められてしまった……という事例があります。

 

今回の事例のポイントとして

 

●引き出しから相続開始日までは1日と短期

●引き出しから相続開始日までの間に支出した事実がない

 

という2つの点があります。

 

今回の事例の場合、期間が短い上にその間に引き出した資金を支出した証拠や合理的な説明ができなかったため、相続人の主張が否認される結果となりました。

なぜ税務署に指摘を受けてしまうのか?

では、税務署はどのような体制で調査を行っているのでしょうか。ご説明していきます。

 

税理士に配られる資料の中に、税務職員の人数や部門ごとの配属人数が分かる「税務職員名簿」という資料があります。

 

相続税の調査を行う資産課税部門は、少数精鋭部隊の税務署の部門となっています。一般的に、税務署全体の人員数における資産課税部門の人員は約1割程度で構成されています。例えば、全体で100名いる税務署において資産課税部門は約10名という計算になります。

 

この人数下において、税務署は2021年10月からピピットリンクというシステム(NTTデータが提供する、行政機関と金融機関をつなぎ、預貯金等の照会をスムーズにするサービス)を本格的に導入しました。

 

これにより、

 

●税務署の預金調査の作業時間が1/2以下に短縮

●税務署からの照会に対する金融機関の回答時間が従来の3ヵ月から最短で1日に短縮

 

といったことが実現されました。

 

結果として、銀行預金を含む金融機関の資金の動きについて、より効率的な調査が可能となりました。

 

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