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《目次》
「相続税の計算」 自分ですることも可能?
ご家族や大切な人が亡くなり、相続人が故人の一定額以上の遺産を引き継ぐ場合、相続の申告義務が発生します。そこで気になるのが、「自分には相続税が一体いくらかかるのか?」ということです。
基本的に、相続税額はご自身で計算することができます。ただし、相続税は法令が大変入り組んでいるため、一般の方が正確な数字を出すのは難しいかもしれません。そのような場合には、「相続税の計算シミュレーション」を行えるサイトの利用をおすすめします。ご自身の財産状況や相続人の人数等を入力するだけで大まかな相続税額が分かるため、相続関連の法律や計算そのものに不安がある方にはもってこいです。
とはいえ、適用が極めて限られる制度を利用する場合や、税務面、法務面で細かい知識が要求される案件では、税理士によるサポートが必要不可欠です。そのようなケースは、誤った見積り方法での相続税額算出だけでなく、税務調査のリスクも重なるため、ただちに専門家に相談することをおすすめします。
【関連記事】「相続税の税務調査」で課税処分に…「不服申立て(再調査の請求・審査請求)」の可能な期間、方法から成功事例まで解説
考慮しなければならない「基礎控除」とは
相続税を計算する際に、まず、最初に考慮すべきなのが「基礎控除」です。相続税は亡くなった全ての人にかかるわけではなく、一定の金額までは申告義務は生じません。つまり、この相続税が発生するボーダーラインとなる金額のことを基礎控除と言います。
基礎控除額は次の計算式で求められます。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数
そのため、相続人の人数が多ければ多いほど、基礎控除額が大きくなり、相続人の人数が少ない人ほど相続税が発生する確率が高くなります。
例えば、被相続人が配偶者と子ども2人を残してお亡くなりになった場合は下記の通りとなります。
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
つまり、このケースでは4,800万円を超えた場合に、申告義務と納税義務が生じる可能性があります。
【関連記事】改正される?相続税の基礎控除とは|下回れば「相続税0円」となる基礎知識
2,500万円の相続税はいくら?
では、実際に例を挙げて相続税の計算をしていきましょう。
まず、被相続人の遺産総額が2,500万円であった場合を考えます。これは先ほどご説明した基礎控除額4,800万円を下回るため、相続税はかかりません。
よって、相続税額は0円となります。
5,000万円の相続税はいくら?
では、遺産総額が5,000万円であった場合を見ていきましょう。
基礎控除額4,800万円を超えているため、相続税が発生します。この基礎控除額を超えた場合、相続税は4段階に分けて計算します。
Step1:遺産総額から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を算出
Step2:課税遺産総額を、仮に、各相続人が法定相続分で相続したとして遺産を振分け
Step3:振分金額に相続税の速算表を乗じた金額を合算して相続税の総額を算出
Step4:各相続人が実際に相続した割合に基づいて相続税を按分
例えば、以下のような前提で詳しく見ていきましょう。
・相続人:3名{妻・子2名(長男・二男)}
Step1:遺産総額から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を算出
相続人の人数で基礎控除額は決まります。先ほどの基礎控除額の公式に当てはめると、この場合の基礎控除額は4,800万円となり、課税遺産金額は、5,000万円-4,800万円=200万円となります。
Step2:課税遺産総額を、仮に、各相続人が法定相続分で相続したとして遺産を振分け
この場合、配偶者は200万円×1/2=100万円、子2人は200万円×1/4=50万円となります。なお、法定相続分は、相続人の続柄と人数によって異なります。相続人が配偶者と子の場合、配偶者は1/2、子は残りの1/2を子の頭数で按分します。そのため、常に同じ割合にはなりません。法定相続人の判定を間違えると相続税の計算を間違えてしまうので注意が必要です。
Step3:振分けられた金額に相続税の速算表を乗じた金額を合算して相続税の総額を算出
Step2の計算結果に、「相続税の速算表」に基づき相続税の税率を乗じます。相続税の税率表は下記の通りです。
この場合だと、各相続人の金額は以下の通りです。
配偶者:100万円×10%=10万円
長男:50万円×10%=5万円
二男:50万円×10%=5万円
この計算結果の金額を合算することによって相続税の総額が算出されます。 そのため、相続税の総額は20万円となります。
Step4:各相続人が実際に相続した割合に基づいて相続税を按分
最後に、各相続人が実際に財産を取得した割合に基づいて相続税を割り振ります。
以下のように財産を取得したと仮定します。
配偶者:4,500万円(取得割合90%)
長男:500万円(取得割合10%)
二男:取得なし(取得割合0%)
相続税の総額20万円をこの取得割合に基づいて配分します。つまり、配偶者は18万円、長男は2万円の税負担となります。
ただし、配偶者は、「配偶者控除」という特例がありますので、この特例が適用されると納税が免除されます。なお、財産を一切取得していない二男は納税不要です。
老後の生活を考えた配偶者控除の使い方、相続税とあなたの老後は大丈夫?【配偶者必見】
ここまでの説明を図示すると下記になります。 かなり特殊な計算方法で慣れていない方には分かりにくいのではないでしょうか。
【関連記事】相続税、いくらからかかる?「基礎控除」「税率の計算方法」から対策まで|税理士が解説
一次相続と二次相続、相続税はどのくらい変わる?
ご夫婦の場合、先に亡くなった方の相続を「一次相続」、残された配偶者の方が亡くなった時のご相続を「二次相続」と言います。「二次相続」で発生する相続税の計算において注意しなければならないことは、相続人の数が減るため基礎控除額が減ること、そして配偶者が相続人にならないため配偶者の税額軽減の特例が使えないことです。
では、この「一次相続」と「二次相続」でどれだけ相続税が変わるのか、具体的な例を挙げて見ていきましょう。
《遺産総額が1億円の場合》
「一次相続」(配偶者、子2人が相続人)において法定相続分で取得した場合の相続税額は…
【1】基礎控除額:3,000万円+600万円×3=4,800万円
1億円-4,800万円=5,200万円
【2】配偶者:5,200万円×1/2=2,600万円
子:5,200万円×1/4=1,300万円
【3】配偶者:2,600万円×15%-50万円=340万円
子:1,300万円×15%-50万円=145万円
【4】340万円+145万円+145万円=630万円
相続税額: 630万円-315万円=315万円
「二次相続」(子2人が相続人)の相続税額は…
【1】基礎控除額:3,000万円+600万円×2=4,200万円
1億円-4,200万円=5,800万円
【2】子:5,800万円×1/2=2,900万円
【3】子:2,900万円×15%-50万円=385万円
【4】相続税額:385万円+385万円=770万円
《遺産総額が2億円の場合》
「一次相続」(配偶者、子2人が相続人)の相続税額は…
同様の計算より、相続税額:1,350万円
「二次相続」(子2人が相続人)の相続税額は…
同様の計算より、相続税額:3,340万円
以上により、遺産総額が同じ場合、「一次相続」と比べて「二次相続」のほうが相続税額は増えるということがわかります。また、相続税は累進課税であるため、遺産総額が大きければ大きいほど相続税は増えることがわかります。
このように、相続税を計算してみることで以下のことが明確になります。
「自分には相続税がいくらかかるのか」
「家族に税金の負担がどれくらいかかるのか」
「納税資金は足りているか」
「納税資金が足りない場合、家を売るのか借入をするか」
現状を知ることで、早いうちに次世代へ財産を引き継ぐなど「二次相続」の相続税対策も行うことができます。
近い将来起こりうるかもしれない相続に不安を持っている方や、「二次相続」の前もった対策を検討している方は、今一度、ご自身の相続税のシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。
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戸﨑 貴之
税理士法人ブライト相続 代表社員税理士
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