退職後に突然突きつけられた妻からの離婚
中野茂雄さん(65歳・仮名)は定年を迎えたばかりです。長年コツコツ返済してきた住宅ローンも退職前に完済。40代から運用も行っていたことから、退職金を合わせた老後資金は5,000万円に到達。年金は月17万円、2年後には妻の年金受給も始まります。
「これだけあれば、夫婦2人でのんびりと老後生活を送れるだろう。なにか趣味を見つけようかな」などと考えていた矢先、妻の藤子さん(63歳・仮名)から切り出されたのは――まさかの離婚話でした。
突然のことに言葉を失う茂雄さん。理由を問いただすと、返ってきた答えにさらに愕然としました。なんと原因の発端は、40年も前の「産後の恨み」だったのです。
感激の立ち会い出産から一転、裏切られた期待
藤子さんは22歳で茂雄さんと結婚し、翌年には長女を、25歳で次女を出産しました。
長女の出産時は、初めての子どもということもあり、茂雄さんも体調を気づかい、立ち会い出産で涙を流すほど感激していました。藤子さんも「これからは夫婦で力を合わせて子育てしていける」と信じて疑いませんでした。
しかし、退院して家に戻った瞬間から、その期待は裏切られたのです。
長女は夜泣きがひどく、藤子さんは慢性的な寝不足状態でした。それなのに、朝食や夕食の支度、洗濯や掃除、アイロンかけなどの家事を、当たり前のように求めてきたのです。
「ずっと家にいるのに、なんでやっていないんだ?」そう言う茂雄さんに、「赤ちゃんの世話で精一杯なの、初めての子で分からないことばかりだし」と訴えても、「俺だって仕事で疲れてるんだからな」と取り合おうとしません。
産後の体調不良から買い物も行けず、会社の帰りに買ってきて欲しいといっても聞いてくれません。仕方なく、藤子さんは実家の母を頼り、生活に必要なものを送ってもらっていました。
休みの日こそ買い物や家事をやってもらおうと思っても、「疲れているから無理」とバッサリ。しかも「子どもの泣き声がうるさいから、休みだってのにゆっくりできやしないよ」とまで言われ、気が狂いそうだったといいます。
次女を妊娠したときはつわりが重く、「このままでは身が持たない」と判断して里帰り出産を選びました。仕事が休みの日だけは実家に来てくれましたが、平日は友人と飲み歩き、連絡すら寄こさない日も多かったといいます。
出産後に茂雄さんの実家を訪れた際、義母から「また女の子なのね」と言われ、藤子さんは胸を刺される思いでした。そんな場面でさえ、茂雄さんは「そうなんだよ。本当は男の子が欲しかったのにな。二人目なんか作るんじゃなかったな」と軽口を叩き、妻を庇うどころか追い打ちをかけました。
「この恨み、絶対に忘れない……」
藤子さんが心に誓ったのは言うまでもありません。
