「社長の仕事」とは?重要な3つの要素
ここで、「社長の仕事」とは何かについて改めて確認しておきましょう。中小企業で経営者がしなければならない仕事、それは端的に言えば「経営」にほかなりません。
経営という言葉は多義的であり明確には定義しづらい面がありますが、その目的は会社を永続させるために「将来の売上と利益を増やすこと」にあります。だとすれば目的論的に定義づければ、「将来の売上・利益を増やすために経営者が行うべき一切の仕事」が経営であるといえるでしょう。
そして、このように経営をとらえる見地からは、次の①から③のような業務を「経営=社長の仕事」の具体例として挙げることができるはずです。
① 経営戦略の立案
組織の中長期的な方針や計画となる経営戦略は、経営の羅針盤としての役割を果たすことになります。会社の売上や営業利益を現状からさらに大きく増やしていきたいのであれば、事業計画を立てる、ビジネスモデルの再構築を試みる、新たな商品・サービスを開発するなど経営戦略の立案が強く求められることになります。
② マーケティング
マーケティングは、開発した商品・サービスを顧客に購入してもらうために行う活動です。消費者のニーズを確実にとらえるためにはマーケティングリサーチを行うことが不可欠となります。
③ 人脈の構築
ビジネスを拡大していくためには人脈が大切になります。経営者には業界の懇親会に参加するなどの活動を通して、人の輪を広げていく努力が求められることになるでしょう。
「社長の仕事」はどれも大切なものばかりですが、その中でも、とりわけ大きな意義を持っているのは「経営戦略の立案」といえます。選択できるビジネスモデルが限られている中小企業が成長し続けるためには、数十年先を見据えた長期的なビジョンを策定することが不可欠となるからです。
すなわち、大企業とは異なり、中小企業は薄利多売を本質とする低価格大量生産型のビジネスモデルを採用することはできません。商品を「1円でも安く売る」あるいは「1秒でも早く売る」というやり方では、最終的に資本の大きさの勝負となることが避けられないため、資金力の乏しい中小企業が大企業に太刀打ちすることは困難です。
このように、中小企業が大企業と同じように低い利益率を前提としたビジネス戦略を展開しても勝ち目はありません。仮に大企業の利益率が2割だとすれば、中小企業は3割、4割の利益率を上げられる商品・サービスで勝負することが必要になるのです。
そのためには、「ほかの競合企業には技術的に作れない」「今までになかった画期的なコンセプトである」「個人個人の顧客の嗜好に合わせてカスタマイズされている」などといった高い付加価値を持った商品・サービスを市場に提供し続けることが不可欠となるでしょう。