近年では相続税の課税はますます重く、また、これまで許容されていた対策にも規制がかかるなど、非常に厳しいものとなっています。大切な資産を減らすことなく無事に相続を乗り切るには、どのような手段があるのでしょうか。「相続実務士」のもとに寄せられた相談実例をもとにプロフェッショナルが解説します。※本記事は株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

妻を激怒させた、高齢独身の姉の「老後生活ビジョン」

●「相談者夫婦と子2人」+「相談者母と独身姉」の組み合わせで二世帯住宅

 

筆者のもとに、70代男性の林田さん夫婦が相談に来られました。林田さんの家族構成は、林田さんの両親と独身の姉です。全員が自宅で同居してきたといいます。15年前に父親が亡くなったとき、自宅の土地は長男である林田さんが相続しました。

 

 

父親が亡くなって数年後、老朽化した家を壊して新しく建て直したのですが、その際、母親と姉が暮らすスペースと、林田さん家族が暮らすスペースを分けた、玄関が別の二世帯住宅としました。

 

●家を売却して老人ホームに入りたいが、3分の1が姉名義なので…

 

父親が亡くなったときの相続では、自宅の土地は林田さん名義にしましたが、家を建て直すときには、それぞれの家族で該当部分の費用を工面しているほか、建物の3分の2は林田さん、3分の1が姉名義となっています。母親の名義にするより姉名義のほうがいいという母親からの提案で、姉も少し自分のお金を出したと聞いています。

 

林田さん夫婦には子どもが2人いますが、大学卒業後、それぞれ家を出て独立しています。そのため、夫婦の2人暮らしには家が広くなりました。

 

林田さんは70代になり、妻と老後のことをいろいろと相談するなかで「ずっと広い家に住み続けるより、子どもたちの世話にならなくていいように、老人ホームに入ろう」と意見がまとまりました。しかし、そのためには家を売却する必要があります。

 

●弟の妻子に老後の面倒を見てもらうつもりの姉

 

土地は林田さん名義とはいえ、建物に姉の名義が入っているため、勝手に売却できません。しかし、姉に話をしたところ「自分は最後までこの家に住み続けるつもり」というのです。しかも、老後の面倒は、義妹となる林田さんの妻や、甥姪に見てもらいたいとまで…。

 

それを聞いた林田さんの妻は激怒。「親が子どもに負担をかけないようにと考えているのに、とても義姉の面倒など見させられない」「入院すれば身内が保証人になり、都度都度呼び出されることになる。そんな役割はとても引き受けられない」というのです。

 

●姉の持分を買い取るので、家から出て行ってもらいたいが…

 

姉との共有だと思い通りにならないので、姉の持分を買い取るから出てもらえないかという話もしたのですが、姉はずっと住み続けるの一点張りで、受け入れてもらえそうにありません。当然、一緒に売却するという話に合意が得られるはずもありません。

 

林田さん夫婦はほとほと困り果てて相談に来られたということなのです。

 

私の老後もよろしく。
私の老後もよろしく。

 

●相談者の妻は「絶対に面倒なんか見ない!」

 

姉は実家だからずっと住み続けたい、独身なので弟夫婦に面倒を見てもらいたい、という気持ちが強く、「高く買い取るから」といった提案では納得しないだろうと想像できます。

 

しかし、林田さんの妻の「義姉の面倒なんか見ない!」という意思も強固で、これではうまくいくはずがありません。70代はまだ、これから20年程度の寿命があると考えられ、長い生活が続くと思われるのに、ストレスをかかえたままでは大変です。

 

●弟家族の持ち分を「賃貸に出す」という方法も

 

姉が売らないというのであれば、林田さんは自分の土地と建物部分を貸し、住み替えるという選択肢があります。独身の姉の相続人は林田さんですから、姉が亡くなったときには林田さんが相続することになります。売却は先延ばしして自分たちが住み替え、自宅は賃貸として姉と距離を置くことで、感情的なトラブルは軽減できます。

 

 相続実務士のアドバイス 

 

たとえ姉弟あれ、家族の形も考え方も違います。今回の事例では、建物を共有したばかりに感情的な対立が起きかねない状況です。長い人生、個々に判断・決断ができるように、土地を分筆し、建物も別々にするべきでした。二世帯住宅はメリットも大きいものの、デメリットもあり、慎重に考えないといけません。

 

【できる対策】

 自分たちが住み替え、姉とは距離を置くことが望ましい
 不動産は賃貸、あるいは持ち分を売却する

【注意ポイント】

 不動産を共有すると、なにをするにも意思統一ができないと進まない
 不動産をきょうだいで共有することは、極力避けたほうがよい

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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