妻と死別後、慣れない家事に苦戦する夫
男性は、一般に配偶者に先立たれると女性以上にその喪失感やダメージが大きいと言われています。何より妻への依存度が高かった家事や近所付き合いなどが思うに任せません。普段から近隣住人と気楽に立ち話をし、物をもらったりあげたり、さらに相談ごとや困ったことだってそれなりに対処してきた妻がそばにいなくなるのです。
彼女に連れられて参加していた町内会・自治会のボランティア活動やその他さまざまな地域行事への参加などがおっくうになります。別居の子どもや孫に会いに行くのも、日々の買い物も含め外出そのものが減って、男性は引きこもる傾向にあります。
そんなことを真っ先に思い出させてくれたのは10年来私の外来に通院していた健夫さん(仮名、66歳)です。
公認会計士として働く健夫さんは、二人の娘さんから「お父さんは一人になったらどうするの? 食事や身の回りのことなんか、何もしないし、できないでしょう」と指摘され、仕事だけに埋没する自分をなかば自嘲するように話しておられました。私の外来を受診され始めた頃のことです。
しかし、2年前に奥様が突然の病で他界され、既に娘さんたちも他県に嫁いでおられましたから、予想もしていなかった独り身の生活が現実となってしまったのです。当然、自炊できる状態になく、外食が中心で、弁当やお惣菜類の買い物をする程度です。
洗濯はできても掃除などは手抜き状態。職場の仲間以外との付き合いがほとんどないそうで、「私が病気にでもなったらどうしたものか」と珍しく弱気なことも口にされるようになりました。
「料理することも楽しいのよ。習いに行ったら」と娘さんに言われる始末。久しぶりに町内会の会合に参加して、財政上の問題をいろいろ指摘したら、「上から目線でちょっと威圧的だ」と後で陰口をたたかれてしまって、ますます出不精になったとおっしゃっておられました。
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