「会社の死」という最悪の事態
ことに、人口減少社会を迎えた日本では、今後、国内マーケットが右肩下がりで縮小していくことが予想されています。たとえ、今は売れている商品やサービスであっても、10年後も同様に売れている保証はまったくありません。時代ごとの市場のニーズを把握する努力を常に怠らず、消費者に求められているものを臨機応変に開発し、即時にマーケットに投入する経営戦略が求められることになります。
経営者が日々の経理の作業に追われている状況では、そうした長期的な視点から時代の変化をとらえた経営戦略を機敏に立案することは難しくなるはずです。
経営者が「社長の仕事」に取り組めず、企業の成長がストップし足踏みが続いてしまった末に待つ運命は──もしかしたら、「会社の死」という最悪の事態かもしれません。
読者の皆さんもよく耳にされると思いますが、創業から10年で廃業・倒産する中小企業の割合は9割以上という話もあります。また、大手信用会社の東京商工リサーチが行った2016年「休廃業・解散企業」動向調査によれば、2016年に休廃業・解散した企業数は2万9583件であり、調査を開始した2000年以降の最多記録だった2013年の2万9047件を上回り、過去最多を更新しています。
産業別に見ると、飲食業や宿泊業、非営利的団体などを含むサービス業他の7949件(構成比26.9%)が最多となっています。以下、建設業の7527件(同25.4%)、小売業の4196件(同14.2%)、製造業の3017件(同10.2%)と続いており、サービス業他と建設業の2産業で5割が占められています。
さらに、調査結果をまとめた東京商工リサーチのレポートでは、以下のように、休廃業・解散を迫られる企業が今後さらに増える可能性があることが示唆されています。
「政府は2016年6月2日に『日本再興戦略2016』を閣議決定し、2015年度の名目GDP(国内総生産)532兆円を600兆円に引き上げる目標を掲げた。これを受けた形で日本銀行は同年6月30日、金融機関向けに『再チャレンジ支援、事業再生・廃業支援』セミナーを開催した。事業の先行き展望が描けない企業に人材や資産を縛り続けることは地域経済に望ましくないとの認識を示し、事業再生や廃業支援への取り組み強化を促した」
現在、政府は、中小企業の成長を促すための施策を次々と打ち出しているところです。他方で、ここに示されているように、「事業の先行き展望が描けない企業=成長性の乏しい企業」が存在し続けることに対しては否定的な姿勢を見せているのです。