(※写真はイメージです/PIXTA)

超高齢化社会で老人で溢れているはずなのに、「おばあちゃん子」がいません。高齢化社会にほど遠かった時代のほうが、人間の老いや死が身近な出来事だったようです。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

多くの高齢者は70代80代を元気に過ごす

■どんな人にも幸せな老いの時期がある

 

でもいま挙げたような老いのイメージには根本的に抜けているものがあります。

 

認知症で何もできなくなるとか寝たきりになるとか、介護施設に入って家族と暮らせなくなるというのは、老いの最終段階でしょう。いまの時代でしたら80代後半から90代にかけてのことで、病気にでもならない限り大半の高齢者は70代80代を元気に過ごしています。

 

ご夫婦で助け合っている80代もいれば、夫や妻に先立たれても身のまわりのことは一人でやり遂げたり、できないことはヘルパーさんの助けを借りながらきちんと暮らしている90代だって珍しくはないのです。

 

ところがそういう老いの現実を、子どもたちはふだん目にすることがありません。

 

ふだんは「大丈夫かな」と心配し、たまに実家に帰れば「やっぱりボケてきたな」とか「歩くのも危なっかしいな」と進んできた老いだけに目が行きます。たまにしか会わなければ余計に目につくのです。「そろそろ施設を探しておかないと」と考えてしまいます。

 

これがもし、身近なところで老いを見つめていればどうなるでしょうか。

 

独り暮らしのおばあちゃん、おじいちゃんだって、手を休めてのんびりお茶を飲んだり菓子を食べたり、近所の仲良しと集まっておしゃべりしたり、飼い猫と日向ぼっこしているときがあります。家事といっても夫婦だけとか独り暮らしになればそれほどやることはないのですから、一日はのんびりしています。お酒の好きなおじいちゃんは、早めに晩酌の時間をつくって少しのお酒を美味しそうに飲んでいるときもあるでしょう。

 

地方に暮らす老人でしたら、小さな畑を作って自分たちが食べるぶんの野菜を育てているかもしれません。公民館のような施設で料理教室とか手芸講習とか、敬老会のような集まりもちょくちょくあります。何の予定もないお年寄りにとって、そういう集まりは楽しみのひとつで、ときどき顔を合わせる幼馴染みとおしゃべりに熱中します。

 

都会暮らしや街暮らしでも同じです。

 

自分が長く暮らしてきた地域には、贔屓の食べ物屋さんや顔馴染みの商店があるものです。散歩がてらゆっくり歩いて買い物に行ったりお昼ご飯を食べたり、仲良しの老人同士で小さな旅行に出かけたり趣味の習い事を始めてみたり、誘い合ってスポーツクラブで軽い体操を始めてみたり、とにかく気が向いたことを気の合う人と楽しんでみることができます。

 

お互いに夫婦だけとか独り暮らしなら、訪ねるのも遠慮が要りませんから、ときには得意な料理を持ち寄って一緒に楽しむことだってあるかもしれません。

 

そういった暮らしは、いまの80代でしたらどこに住んでいても特別な光景ではありませんね。誰にも気を遣わなくて済むし、気兼ねも要らない、見栄だの体裁だのを取り繕う必要もありません。ゆったりして、気持ちのいい時間が一日の中にたっぷり用意されています。「ああ、歳を取るっていいなあ」と目を細めている老人が案外、多いかもしれないのです。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

 

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本連載は和田秀樹氏の著書『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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