(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の姿を街角であまり見かけなくなりました。いまはたまたまコロナのせいもあって外出を控えているだけかもしれませんが、知らず知らずのうちに足腰の衰えが進み、外出に不安を感じるようになっている可能性があります。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

高齢者は引きこもるしかない現実

■いまの社会は高齢者を隔離しようとしていないだろうか

 

いま、幸せな老いを目にする機会が現役世代にはなかなかありません。

 

どの家にも高齢の親が同居していた時代ならともかく、別居していたり親だけが施設で暮らしているというケースが増えているからです。

 

それからこれは私の感想になりますが、高齢者の姿を街角であまり見かけなくなりました。いまはたまたまコロナのせいもあって外出を控えているだけかもしれませんが、コロナが収まっても、高齢者が家に引きこもる傾向が続くのではないかと危惧しています。

 

同居していても離れて暮らしていても家族にとってそれがいちばん安心というのがあります。

 

高齢者自身が、引きこもり生活に慣れてしまって、知らず知らずのうちに足腰の衰えが進み、外出に不安を感じるようになっている可能性があります。引きこもってテレビの前で過ごす一日が日常的になってしまうかもしれません。

 

そしてこれは私がいつも腹を立てていることなのですが、世の中が高齢者の外出を拒もうとしています。免許返納を勧めたり、免許更新に高齢者だけが受ける試験を設定したややこしい手続きを義務化させたりしてハードルを高くしました。都会の大きな交差点はどんどん歩道橋が作られて、しかもエスカレーターはありません。ターミナル駅もテナントだけが充実してエスカレーターは後回しにされています。街角や公園のベンチもどんどん片づけられて一休みする場所がありません。

 

つまり地方で暮らそうが都会で暮らそうが、高齢者は引きこもるしかなくなっているのです。

 

海外に行くと、たとえばニューヨークのセントラルパークのような中心部の公園にも街角にものんびり歩いている高齢者がふつうに目につきます。疲れたらベンチで休み、そこで同じような高齢者と楽しそうにおしゃべりしています。隣のベンチには小さな子どもや赤ちゃんを抱いたお母さんがこれものんびり休んでいます。

 

そういう幅広い年代が、ゆったりした気持ちでお互いを見守る社会がごく自然なものになっています。ところが日本では世界のどこの国より高齢者が多いはずなのに、おじいちゃんやおばあちゃんの姿がありません。

 

そしてそのことに気がつく人はあまりいません。

 

■あなたの老いの中の幸せな時間に気がつこう

 

この連載は、少しゆったりした気持ちで読んでいただければありがたいです。

 

「年寄り専門の精神科医が言うんだから、少しは役に立つ話が聞けるかもしれない」

 

まあ、そんな程度の気持ちでいいです。

 

まず私が言いたいのは、老いの中にはたくさんの幸せな時間が用意されているということです。ここまでに書いてきたように、身近な老いを見守る経験が減ってきた現代は、どうしても老いに対して悪いイメージだけを持ってしまいがちです。

 

実際にはそんなことはありません。

 

老いはほとんどの義務やノルマから解放される自由な時間をたっぷりと与えてくれます。

 

できないことが増えてくるとしても、やらなければいけないことが減ってくるのですから楽になります。できないこともムリにやる必要はないし、元気なころのように完ぺきにやり遂げる必要はありません。ちゃらんぽらんが許されてくるのです。

 

次ページいまの70歳は前期高齢者だが元気

本連載は和田秀樹氏の著書『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

老人入門 いまさら聞けない必須知識20講

老人入門 いまさら聞けない必須知識20講

和田 秀樹

ワニブックス

老いに対する正しい知識がないことで、 過度に不安になったり、老いが加速したり、 結果的に不幸な老い方をしている人が多くいます。 そこで本書では、老年医学の専門家による 「これだけは知っておかないともったいない」とい…

80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい

80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい

和田 秀樹

廣済堂出版

70代は人生の下り坂に差し掛かった時期。一気に滑り台のようにおりていくか、鼻歌でも歌いながら気長におりていくか……。80代、90代を迎える大事な時間である70代をいかに過ごすべきか。30年以上にわたり高齢者医療に携わって…

アドラー流「自分から勉強する子」の親の言葉

アドラー流「自分から勉強する子」の親の言葉

和田 秀樹

大和書房

親の言葉かけが、子どもを東大へ行かせます。 罰しても子どもは勉強しません。なぜなら自分に価値があると思うときに子どもは勇気を持てるからです。アドラーは親子関係を対等なものと考え、子どもが人生の課題に取り組み、乗…

東大医学部

東大医学部

和田 秀樹 鳥集 徹

ブックマン社

灘高→東大理Ⅲ→東大医学部卒。それは、日本の偏差値トップの子どもだけが許された、誰もがうらやむ超・エリートコースである。しかし、東大医学部卒の医師が、名医や素晴らしい研究者となり、成功した人生を歩むとは限らない…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録