老後の暮らしをどう選ぶか――日本では今、持ち家の処分や老人ホームへの入居を含む「住み替え」を検討する高齢者が増えています。経済的に余裕のある人ほど「後悔しないように」と準備を重ねますが、それでも理想と現実のギャップに直面することがあります。
悔やんでます…年金月33万円・総資産1億円「何もかも準備してきた」はずの77歳夫妻、高級老人ホームでの最後の生活に待っていた〈予想外の結末〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

老後は高級老人ホームで…完璧な準備のつもりだった

郊外の閑静な住宅街に住む小山勝さんと弘子さん(ともに仮名・77歳)は、持ち家を含めた総資産で1億円を超えるとされ、夫婦ふたりの年金は月33万円強。経済的な余裕がある老後生活を送ってきました。

 

長年、共働きで地道に生活を築いてきたふたりは、「将来は必ず夫婦で入れる老人ホームに」と、60代のころから有料老人ホームの情報を集め、パンフレットや見学にも足を運ぶなど、早い段階から「終の棲家」について真剣に考えてきました。戸建て住宅のメンテナンスや、今後予想される身体の衰えを見越し、最終的には自然環境に恵まれた高級老人ホームへの入居を決断。入居一時金3,500万円、月額費用も約40万円と高額ではありましたが、快適な老後のためには惜しくない投資であり、人生最後の贅沢と捉えていました。

 

選んだ施設は、四季折々の景色が楽しめる自然に囲まれた立地。館内にはフィットネスジム、図書室、シアタールーム、さらには温泉付き大浴場まで備えられており、食事はホテルの元料理長が監修。入居前の説明では、医療サポートも手厚く、介護が必要になっても対応可能とのことでした。小山夫妻は、「これで将来は安心だ」と胸をなで下ろしました。

 

入居後しばらくは、まさに理想的な生活が続きました。手間のかかる掃除や食事の支度からも解放され、整った環境のなかでのんびりと過ごす日々。おいしい食事と快適な住空間に、弘子さんは「本当にここを選んでよかった」と何度もつぶやいたといいます。

 

ところが、そんな理想的な日々は長くは続きませんでした。