
夫婦ふたり、年金だけで穏やかに暮らしていたが…
岩崎智子さん(仮名・69歳)は、定年まで勤め上げた会社員生活を経て、現在は月額15万円ほどの老齢年金を受け取りながら、都内の賃貸住宅で夫・豊さん(仮名・66歳)と暮らしていました。夫婦そろって年金生活に入り、ふたりの年金を合わせれば月額30万円を超えるため、生活に大きな不安はなく、旅行や外食などを楽しんでいたといいます。
「お互いにそれなりに年金をもらえていたので、老後もそこそこ自由に暮らせると話していました」
しかし、そんな日常が、豊さんの急逝によって一変します。持病はあったものの、命に関わるような状況ではなかったため、突然の訃報に智子さんは大きなショックを受けました。夫を失った悲しみと同時に、現実的な問題として浮かび上がってきたのが「生活費」です。夫婦ふたりでやりくりしていた生活を、これからは智子さんひとりで担っていかなければなりません。
そんなとき、頭をよぎったのが「遺族年金」という言葉でした。
「夫は会社員だったし、厚生年金にも長く加入していました。遺族年金があれば、それを足して何とかやっていけるかもと考えていたんです」
ところが、実際に届いた年金通知を見て、智子さんは愕然とします。そこに記載されていた遺族年金の金額は、月額5,000円。想定額の20分の1という結果に、「これは何かの間違いなのでは」と目を疑ったといいます。
遺族年金について、智子さんはある程度の知識を持っていたつもりでした。というのも、以前、パートナーに先立たれた友人から「遺族年金は亡くなった夫の年金の4分の3くらい」と聞いていたためです。夫が月額16万円受け取っていたことを考えれば、12万円ほどは支給されるのでは……そんな期待がありました。