(※写真はイメージです/PIXTA)

超高齢化社会で老人で溢れているはずなのに、「おばあちゃん子」がいません。高齢化社会にほど遠かった時代のほうが、人間の老いや死が身近な出来事だったようです。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

「老いること」は本当に不幸なのか?

■老いることへのマイナスイメージに振り回されていないだろうか

 

家庭の中で老人と接する機会が減ったかわりに、高齢者を取り囲む厳しい状況だけはどんどんテレビやマスコミで報道されます。

 

認知症が原因で起こったとされる交通事故、介護離職のように高齢者が家族に負担や犠牲を強いているような現実、高齢者の感情的な振る舞いや居丈高な言動などですが、高齢者を抱えている家族の不安を煽るような報道もしばしば見られます。

 

とくに離れて暮らしている親がいれば、子どもは「一人にさせて大丈夫だろうか」と心配します。「少しボケてきたみたいだから、火の始末やガスの消し忘れも心配だ」「転んでケガでもされたら寝たきりになってしまう」と気が休まりません。

 

そして年老いた親のほとんどは、施設の世話になるのを嫌がります。子どもがどんなに勧めても、「まだ大丈夫だ」と言い張ります。

 

たしかに介護サービスはかつてに比べれば充実してきたかもしれません。かつてはどんなに高齢になっても、病気にならない限り自宅で世話をするしかなかったのですから家族にはそれなりの負担がかかってきました。

 

その点だけを考えると、いまはデイサービスや訪問介護を受けることができて、介護度が高くなれば施設(特別養護老人ホームなど)に入ることもできるのですから家族は高齢者の世話をしなくて済むようになっています。

 

これは高齢者が気を遣ったり遠慮したり、あるいは家族が苦労しなくて済むという点ではとてもいいことだと思います。でもそのかわり、人間が老いて弱っていくことのありのままの姿に触れる機会も減っていきます。

 

すると、自分が老いることに対してもマスコミが植え付けているような不安イメージしか持てなくなります。

 

高齢になるということは認知症や寝たきりになって介護を受け、家族や社会とのつながりも断たれてしまい、これといって楽しいこともなく弱って死んでいく。たとえばそんなイメージです。これでは老いることについて悲観的な受け止め方しかできなくなるのも当然のような気がします。

 

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本連載は和田秀樹氏の著書『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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