(※写真はイメージです/PIXTA)

介護保険は自分が申請しないと利用することができません。イザとなったらまず要介護の認定を受けるために役所に申請しなければなりません。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

介護保険は自分から申請しないと使えない

■待っていても介護の手は差し伸べられない

 

「たぶん、いつかは介護を受けるんだろうな」と思っている人は多いと思います。

 

「妻(夫)や子どもたちが介護できなくなったらいろいろな介護サービスを受けるしかないだろう」

 

最初のうちはヘルパーさんに来てもらったりデイサービスに送迎してもらったりしても、最後は介護施設に入るかもしれません。その介護施設にもいろいろなタイプがあります。費用もピンからキリまでです。そういったさまざまな介護制度について、いまのあなたにどれくらいの知識があるでしょうか?

 

「まだまだ先のことだ」と思っているかもしれません。

 

「施設には入りたくない、自宅で死ぬまで暮らしたい」という希望だってあるでしょう。

 

でも、老いがどんなにゆっくりと進むとしても、そこにはフェーズがあるのでした。

 

思いがけないケガや病気で動けなくなってから介護制度を利用しようと思っても、望まないサービスを押しつけられたり、逆に「こうして欲しい」というサービスを受けられなかったりするかもしれません。そこで悔やむくらいなら、「まだ先のことだ」と思っているうちに、介護保険制度の知識をきちんと備えておいたほうがいいです。

 

「歩行が難しくなったり、認知症で生活ができなくなったらこういうサービスだけ受けたい」
「家族に手続きをどんどん進められるより、自分の意思で希望するサービスを選びたい」

 

その程度の気持ちは70代後半の方でしたら持っていると思います。そのための知識です。

 

そこでまず、いちばん大事なことから説明します。それは、介護保険の利用は権利だということです。権利ですから、自分から申し出て行使しなければいけません。

 

よくあることですが、動けなくなったら待っていれば行政から手が差し伸べられると思っている人がいます。「寝たきりになれば、家族や隣近所が役所に連絡して介護保険を適用してくれるんだろう」と考える人です。医療保険だって、自分で病院を選んで足を運んで医者に診てもらわなければ使えません。介護保険も自分から動いて「こうして欲しい」という希望を伝えなければ、サービスは始まらないのです。

 

■介護保険制度は公助ではなく共助である、私たちが支えている

 

もう少し詳しく説明しましょう。

 

介護保険制度は2000年にスタートしました。

 

高齢者は増えつづけますが、介護する家族は、少子化の上に親と別々に暮らす核家族化がすすみました。高齢者介護は家族介護だけには頼れなくなっていました。

 

介護保険制度がスタートするまでは、高齢者福祉に限らず福祉というのは行政の措置事業でした。

 

「措置」というのは、行政の判断で必要なサービスが決められます。わかりやすくいえば指示になります。役所から「この施設に入りなさい」「ヘルパーを派遣します」と方針が伝えられます。低所得者や身寄りのない人の支援が主になるので、ほとんどのケースで家族が介護するのが当たり前という風潮がありました。

 

介護保険制度になっていちばん変わったのは、措置ではなく、介護保険料を払っているわたしたちがサービスを選べるようになったという点です。これを「措置から権利へ」といいます。

 

現在では、ほとんどの福祉施設もケアマネージャーがいる事業所も民間の施設です。ちなみに社会福祉協議会は、公的な施設と思われがちですが、行政とは切り離された民間施設です。

 

そういった背景を考えていくと、介護制度というのは公助ではなく共助ということに気がつきます。介護保険料を取られているのですから、その財源は私たちが負担しているのです。遠慮なんか要らないということです。役所はただの窓口で、実際の運営は民間が受け持っています。その民間の運営費も私たちが支えています。堂々と利用していいのです。

 

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本連載は和田秀樹氏の著書『老人入門 いまさら聞けない必須知識20講』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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