「税金分」を現金で確保しておくことが重要に
暗号資産の投資では、含み益だけを見て「資産が増えた」と判断するのは危険だ。利益が確定した段階で、その利益に対応する納税資金を確保しておかなければ、相場の急落によって納税資金が不足する可能性があるからだ。
貝井税理士は、投資家が日頃から意識すべき点についてこう話す。
「投資家としては、取引の都度、課税対象となる利益を把握し、納税見込額に相当する資金を円で確保しておくことが重要です。また、取得価額を確認できなければ、実際の利益より不利な計算となる可能性があるため、取引履歴、送受信履歴、取得価額などの記録を継続して保存しておく必要があります」
暗号資産を保有する人にとって、ウォレットの管理だけでなく、税務記録の管理も重要な資産管理の一部になるようだ。
「ウォレットを自分で管理すれば大丈夫」という時代ではなくなる
暗号資産の世界では、「Not your keys, not your coins(秘密鍵を持たなければ本当の意味で自分の資産ではない)」という考え方がある。取引所の破綻リスクなどを避けるため、暗号資産を取引所から引き出し、自らウォレットで管理する投資家も少なくない。
しかし、資産を自己管理していることと、税務上の義務から逃れられることは別問題だ。
今回の国税徴収法改正は、暗号資産が「デジタルだから差し押さえにくい」という従来の徴収実務上の課題に対応するものだ。
改正後は、自己管理ウォレットに保有する暗号資産についても、把握された財産を徴収職員の管理下へ移すための法的手続が明確になる。さらに、移転命令に正当な理由なく従わなければ、3年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金の対象となる可能性がある。
ただし、税務当局が秘密鍵を復元して本人の意思とは無関係に暗号資産を送金できるようになるわけではない。
今回の改正は、自己管理ウォレットの暗号資産について、差押えを実際の換価・回収につなげるための手続を強化するものといえるだろう。
令和9年4月1日の施行を前に、暗号資産を保有する人が確認すべきなのは、「どこに保管しているか」だけではない。
売却や別の暗号資産との交換などによって利益が確定した時点で税額を見積もり、納税資金を確保しているか。取引記録をきちんと残しているか。そして、納税義務を果たさないまま資産を自己管理ウォレットに移しても、徴収を免れることにはならない――。
暗号資産が一般的な投資対象となったいま、こうした税務上の基本を理解しておくことが、これまで以上に重要になっている。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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