(※写真はイメージです/PIXTA)

国税庁が「評価額を意図的に下げることによる極端な節税」が行われていることを踏まえ、非上場株式の株価算定ルールを見直す方針であることが一部報道で明らかになった。1964年に現行ルールが策定されて以降初の抜本的な変更となる見通しだが、実はこの「評価が安すぎるのではないか」という指摘自体は、すでに36年前の国会審議で交わされていたものだ。国税庁が有識者会議で示した具体的な株価圧縮スキームと併せて、株価算定方式の見直しに至る経緯を整理する。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

 ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

父が溶かした退職金【上巻】・【下巻】
小林篤典(著)+ゴールドオンライン(編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

非上場株式の評価は、なぜいま見直されようとしているのか

非上場株式の評価をめぐる制度が、いま大きく見直されようとしている。背景にあるのは、類似業種比準方式など現行の評価方法と、実際の企業価値との間に生じるかい離だ。加えて、評価方法の仕組みを利用して、相続税や贈与税の課税対象となる株式の評価額を大幅に圧縮する事例も明らかになっている。

 

国税庁は2026年4月、「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を設置し、評価方法そのものの見直しに向けた議論を始めた。会議では、類似業種比準方式の合理性や簡便性を評価する意見がある一方、現在の企業価値評価の実務とのかい離や、制度を利用した株価圧縮への対応を求める声も出ている。

 

しかし、こうした問題は決して最近になって突然浮上したものではない。実は36年前の国会でも、類似業種比準方式によって非上場株式が実態より低く評価される可能性について、すでに問題が指摘されていた。非上場株式の評価をめぐる摩擦は、実は長い歴史を持っている。

 

平成2年6月22日の衆議院「土地問題等に関する特別委員会」では、類似業種比準方式によって株式を評価する場合、利益や配当の少ない会社では、会社の実態からみて全体として2割程度の評価にしかならないケースがあるとの問題が指摘された。

 

さらに、そもそも「上場会社に類似した会社が本当に存在するのか」という、類似業種比準方式の前提そのものへの疑問も示された。

 

当時の国税庁は、現行の評価方法について、取引相場のない株式の実態や、中小企業の事業承継への配慮から採用していると説明する一方、行き過ぎた節税策については、課税の公平という観点から問題があるとの認識も示していた。

 

このように、平成2年の時点で、非上場株式を実態より低く評価してしまう問題と、評価額を引き上げれば中小企業の事業承継に重い負担を強いるという問題――この相反する二つの課題が、すでに国会で同時に取り上げられていた。

 

36年前から指摘されてきた問題が、会計検査院の指摘などを経て、改めて制度見直しの俎上に載ったといえるだろう。

現在の非上場株式はどう評価されているのか

そもそも、非上場株式には上場株式のような市場価格が存在しないため、相続税や贈与税に関しては、国税庁の財産評価基本通達に基づいて株価を算定する。

 

また、大会社は原則として類似業種比準方式、中会社は類似業種比準方式と純資産価額方式の併用、小会社は原則として純資産価額方式によって評価する。事業内容が類似する上場会社の株価を基準に、評価対象会社の1株当たりの配当、利益、簿価純資産の3要素を比較して株価を算出する方法だ。

 

また、同族株主以外の株主については、原則的評価方式ではなく、配当金を一定の利率(現在10%)で還元し株価を算定する「配当還元方式」が用いられる。

 

非上場株式をDCF法等によって一社一社企業価値評価するとなれば、納税者にも税務当局にも大きな負担が生じる。そのため、一定のルールによって画一的に評価する仕組みによって、納税者間の公平性や予測可能性、税務行政の効率性を確保してきたのである。

 

問題は、この「簡便なルール」を逆手に取ることが可能になっている点にあるのだ。

 

次ページ裁判所はこれまで「現行制度は合理的」としてきた

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧