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中小企業庁が懸念する「自社株評価額の上昇」
今回の見直しをめぐって、中小企業庁が特に問題視しているのが事業承継への影響である。
中小企業庁は意見書のなかで、評価方法の見直しによって非上場株式の評価額が大幅に上昇した場合、後継者の納税負担が増加し、円滑な事業承継に支障を来す可能性を指摘している。
非上場会社の株式は、上場株式のように市場ですぐに売却できるものではない。経営者から株式を引き継いだ後継者が、経営権を維持するために自社株を保有し続けなければならないケースも多い。
そのため、株式の評価額が上昇して相続税や贈与税の負担が大きくなれば、納税資金を確保するために会社の経営や事業に必要な資産を売却したり、設備投資など成長のために使う資金を納税に回したりする可能性がある。中小企業庁は、場合によっては廃業に追い込まれるなど、事業承継に深刻な支障を来すおそれがあるとしている。
さらに、影響は事業承継だけにとどまらない。
新たな評価方式では企業の収益力が評価額に反映されやすくなるため、企業が成長して利益を上げるほど、将来の事業承継時に自社株の評価額が高くなる可能性がある。
中小企業庁は、収益拡大が承継時の負担増に直結すれば、経営者が成長投資を抑制するおそれがあると指摘。政府が掲げる中堅・中小企業の「稼ぐ力」の強化や、成長投資、賃上げを後押しする政策の方向性との整合性にも留意する必要があるとしている。
会計検査院の「評価のかい離」への指摘
では、そもそも国税庁はなぜ評価方法を見直そうとしているのか。一つとして挙げられるのが、会計検査院による令和5年度決算検査報告だという。
非上場株式は、会社の規模などに応じて「類似業種比準方式」「純資産価額方式」などによって評価される。現在は、大会社の株式は原則として類似業種比準方式、中会社は併用方式、小会社は純資産価額方式によって評価する仕組みとなっている。もっとも、大会社や中会社について純資産価額方式を選択できる一方、小会社についても類似業種比準方式との併用方式を選択できるなど、一定の選択肢も設けられている。
類似業種比準方式では、評価会社と類似する業種の上場会社の株価を基に、1株当たりの配当金額、利益金額、純資産価額の3要素を比較して評価額を算出する。一方、純資産価額方式では、会社の資産から負債などを差し引いた純資産を基礎として評価する。
会計検査院は、令和2年分と令和3年分の相続税・贈与税の申告について、取引相場のない株式が含まれる申告から計1,600件を抽出し、延べ1,785社の評価会社を対象として検査した。
その結果、類似業種比準方式などによる評価額と、純資産価額方式による評価額との間に大きなかい離が生じていることが確認された。特に、類似業種比準方式を適用する割合が高い規模の大きな会社ほど、純資産価額に比べて株式の評価額が相対的に低く算定される傾向があることから、会計検査院は、異なる規模区分の会社間で株式評価の公平性が必ずしも確保されているとはいえないと指摘した。
さらに、配当還元方式についても、還元率10%が昭和39年(1964年)から約60年間にわたって見直されていないことを指摘している。
国税庁はこうした会計検査院の指摘を踏まえ、2026年4月から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催。相続税法の「時価主義」の下で、より適正な評価制度のあり方について検討を進めている。

