なぜ自己管理ウォレットの暗号資産は「差し押さえにくかった」のか
では、従来の制度にはどのような課題があったのだろうか。
税金を滞納した場合、国税徴収法に基づき、預貯金や給与、不動産、有価証券などの財産が差し押さえられることがある。
ところが、暗号資産は従来の財産とは性質が大きく異なる。
ビットコインなどの暗号資産は、銀行口座で管理される預金とは異なり、ブロックチェーン上で移転されるデジタル資産だ。
その利用には秘密鍵が必要であり、秘密鍵を本人が管理する「セルフカストディ(自己管理)」では、第三者が本人に代わって自由に資産を移転することはできない。暗号資産交
換業者に預けている場合には、交換業者を通じた差押えや取立てが可能だ。一方、自己管理ウォレットでは、銀行預金のように第三者に通知すれば本人の協力なしに取り立てられる仕組みがない。
貝井税理士は、従来の制度の問題についてこう説明する。
「預金であれば、税務署が銀行に差押通知を送ることで、滞納者本人の協力がなくても銀行から取り立てることができます。一方、自己管理ウォレットの暗号資産には、銀行に相当する第三者がおらず、原則として秘密鍵を持つ本人などでなければ移転できません。滞納者が送金に協力しなければ、差押えを実際の回収につなげることが難しかったのです」
つまり、従来から法的には差押えの対象となり得たものの、差し押さえた暗号資産を徴収職員の管理下へ移し、換価するまでの実務に課題があった。
