「今度、じいじの家にもおいで」孫の返事で気づいた変化
正雄さん(仮名・74歳)は、6年前に妻を亡くしてから一人で暮らしています。年金は月約17万円。息子の健太さん(仮名・45歳)は車で40分ほどの場所に住み、妻と小学4年生の娘、小学1年生の息子との4人暮らしです。
孫が小さかったころ、正雄さんは月に2、3回、息子宅を訪れていました。
「今週末、子どもたちと公園行かない?」
「日曜日、うちでご飯食べる?」
健太さんからそんな連絡が来ることも多く、正雄さんも楽しみに出かけます。息子夫婦が買い物へ行く間に孫を見たり、公園へ連れて行ったりすることもありました。
ところが、孫が成長するにつれて状況は少しずつ変わっていきます。
上の孫には友達との予定ができ、下の孫も習い事を始めました。家族4人で出かける週末もあります。
健太さんから誘われる回数も、いつの間にか減っていました。その代わり、正雄さんから連絡することが増えます。
「今週、行ってもいい?」
「今週はちょっと予定があるから、来週なら大丈夫だよ」
断られることもありましたが、正雄さんは特に気にしていませんでした。
「子どもが大きくなれば忙しくなる。それくらいは分かっていたんです。ただ、自分では以前と同じような感覚でいたんでしょうね」
そんなある日、健太さんから「日曜日、誕生日会やるけど来る?」と連絡がありました。上の孫の10歳の誕生日でした。
正雄さんはプレゼントを用意し、当日は少し早めに息子宅へ。久しぶりに向こうから誘われたこともあり、楽しみにしていたといいます。
誕生日会が始まると、孫はプレゼントを開けながら、学校や友達の話を両親に聞かせていました。正雄さんも「学校は楽しいか?」などと声をかけますが、話題は正雄さんの知らない友達や習い事へ移っていきます。
食事のあと、正雄さんは孫に言いました。
「今度、じいじのところにも遊びにおいで」
孫は「うん」と答えたあと、少し考えて続けます。
「でも土曜日は塾で、日曜日は友達と遊ぶかも」
すると健太さんも、「最近、2人とも結構予定あるんだよ」と笑いました。
何気ない会話でした。それでも正雄さんは、そのとき初めて、ここ数年の変化が一本につながったように感じたといいます。
以前は、孫と遊ぶことが自然に週末の予定になっていました。しかし今は、孫にも自分の生活があります。
「向こうが変わったというより、私だけが昔のままだったんでしょうね」
