ローン完済で住居費ゼロのはずが…築30年を超え、増える出費
達夫さん(仮名・70歳)と妻の美智子さん(仮名・69歳)は、夫婦合わせて月約21万円の年金で暮らしています。
2人が長年暮らしてきたのは、首都圏郊外にある4LDKの一戸建て。30代で購入し、2人の娘を育て、住宅ローンは60代前半で完済しました。
「ローンを払い終えたときは、これで老後の住まいには困らないと思いました」
ところが、そのころから別の出費が目立ち始めます。
給湯器を交換した翌年にはエアコンが故障。その後は外壁と屋根のメンテナンスが必要になりました。さらに、庭木の剪定や雨どいの清掃もあります。
毎月決まった額が出ていくわけではありません。しかし、数十万円単位の支出が突然発生するたび、達夫さんは「次はどこだろう」と考えるようになりました。
家計に余裕がまったくなかったわけではありません。
夫婦には退職金などから残した約3,000万円の金融資産がありました。問題は、払えるかどうかより、築年数を重ねる家をこれから何年、自分たちで管理していくのかということでした。
ある日、美智子さんが2階から掃除機を持って下りながら言いました。
「この家、私たち二人にはもう大きすぎない?」
子ども部屋はほとんど使っていません。それでも換気や掃除は必要です。
最寄り駅まではバスで約15分。スーパーへは車で行くことが多く、今後運転をやめたあとの生活も気になっていました。
夫婦が住み替えを考え始めたのは、このころです。
総務省『令和5年住宅・土地統計調査』によると、高齢者のいる夫婦のみの世帯の87.6%が持ち家に暮らしており、借家は12.3%です。高齢夫婦にとって持ち家が多数派であることが分かります。
そんな2人が見つけたのが、駅から徒歩圏内にあるUR賃貸住宅でした。
築年数は経っていますが、内装は改修されており、間取りは2DK。スーパーやドラッグストアも歩いて行けます。家賃は共益費を含めて月7万円台でした。
娘に話すと、真っ先にこう聞かれました。
「ローンもないのに、なんでわざわざ家賃を払うの?」
達夫さん自身、それが最後まで引っかかっていました。
戸建てに住み続ければ、家賃はかかりません。一方、団地へ移れば、年金生活になってから毎月7万円以上を住居費として支払うことになります。
それでも夫婦は、戸建てを売ることにしました。
