ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
父が溶かした退職金【上巻】・【下巻】
小林篤典(著)+ゴールドオンライン(編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
「相続人は3人」のはずだった…妻の一言で凍りついた
会社を経営していたAさん(70歳)は、心筋梗塞で突然この世を去った。遺された家族は、再婚した妻のB子さん(38歳)と、前妻との間に生まれた長男(43歳)、長女(40歳)の3人である。
遺産は自宅、自社株、預貯金など約2億円。葬儀を終え、四十九日が過ぎたころ、家族は相続税の申告を依頼した税理士の事務所に集まった。
長男が口を開く。
「相続人は妻と子ども2人ですから、3人で遺産の分け方を決めればいいですよね?」
税理士がうなずこうとした、そのときだった。
B子さんが少しためらいながら話し始める。
「先生、実は……私、妊娠しています」
部屋の空気が一瞬止まった。
「えっ?」
長女が驚いた表情で尋ねる。
「でも、まだ生まれていませんよね?」
「はい。まだ妊娠がわかったばかりで、出産はこれから7カ月ほど先の予定です」
長男は少し安心したように言った。
「それなら相続には関係ないですよね?」
しかし、税理士は静かに首を横に振った。
「いいえ。おなかのお子さんは、無事に出生すれば、お父さまが亡くなった時点にさかのぼって相続人になります」
「まだ生まれていない子どもにも相続権があるんですか?」
兄妹は顔を見合わせた。
税理士は「相続については、胎児は『すでに生まれたもの』とみなされます。もちろん、無事に出生することが条件ですが、お子さんが生まれれば相続人は3人ではなく4人になります」と、民法の条文を開きながら説明した。
さらに税理士は続けた。
「法定相続分も変わりますし、相続税の基礎控除額も変わります。相続税の申告期限までに出生するかどうかによって、手続きも変わる可能性があります」
長男は思わず苦笑した。
「相続人は3人だと思い込んでいました」
税理士は静かに答える。
「相続では、『誰が相続人なのか』を最初に正確に確認することが何より大切なのです」

