(※写真はイメージです/PIXTA)

相続では、配偶者や子どもが相続人になることは広く知られている。しかし、相続人のなかに「まだ生まれていない子ども」や「未成年者」がいる場合には、どうなるのだろうか。胎児であっても、無事に出生すれば相続開始時にさかのぼって相続人となる。また、未成年者が相続人となる場合には、家庭裁判所で「特別代理人」の選任が必要になるケースもある。制度を知らずに手続きを進めると、遺産分割協議をやり直したり、相続税申告を修正したりする事態にもなりかねない。家庭裁判所で行われている手続きや相続税実務を踏まえながら、「胎児」と「未成年者」が関係する相続で注意すべきポイントを解説する。※本連載は、THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班が担当する。

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「相続人は3人」のはずだった…妻の一言で凍りついた

会社を経営していたAさん(70歳)は、心筋梗塞で突然この世を去った。遺された家族は、再婚した妻のB子さん(38歳)と、前妻との間に生まれた長男(43歳)、長女(40歳)の3人である。

 

遺産は自宅、自社株、預貯金など約2億円。葬儀を終え、四十九日が過ぎたころ、家族は相続税の申告を依頼した税理士の事務所に集まった。

 

長男が口を開く。

 

「相続人は妻と子ども2人ですから、3人で遺産の分け方を決めればいいですよね?」

 

税理士がうなずこうとした、そのときだった。

 

B子さんが少しためらいながら話し始める。

 

「先生、実は……私、妊娠しています」

 

部屋の空気が一瞬止まった。

 

「えっ?」

 

長女が驚いた表情で尋ねる。

 

「でも、まだ生まれていませんよね?」

 

「はい。まだ妊娠がわかったばかりで、出産はこれから7カ月ほど先の予定です」

 

長男は少し安心したように言った。

 

「それなら相続には関係ないですよね?」

 

しかし、税理士は静かに首を横に振った。

 

「いいえ。おなかのお子さんは、無事に出生すれば、お父さまが亡くなった時点にさかのぼって相続人になります」

 

「まだ生まれていない子どもにも相続権があるんですか?」

 

兄妹は顔を見合わせた。

 

税理士は「相続については、胎児は『すでに生まれたもの』とみなされます。もちろん、無事に出生することが条件ですが、お子さんが生まれれば相続人は3人ではなく4人になります」と、民法の条文を開きながら説明した。

 

さらに税理士は続けた。

 

「法定相続分も変わりますし、相続税の基礎控除額も変わります。相続税の申告期限までに出生するかどうかによって、手続きも変わる可能性があります」

 

長男は思わず苦笑した。

 

「相続人は3人だと思い込んでいました」

 

税理士は静かに答える。

 

「相続では、『誰が相続人なのか』を最初に正確に確認することが何より大切なのです」

 

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