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食料品の消費税を「8%→1%」へ、2027年4月から2年間
このたび公表された大綱案でまず注目されるのが、飲食料品に対する消費税率の特例だ。
2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、現在、軽減税率8%の対象となっている飲食料品について、消費税率を1%に引き下げる意向だ。内訳は国税としての消費税が0.78%、地方消費税が0.22%で、合計1%となる。
一方、軽減税率の対象となっている飲食料品以外の品目や、週2回以上発行される新聞の定期購読については、現行制度を維持する。
たとえば、本体価格1万円の食料品であれば、現在の8%なら税込価格は1万800円となる。これが1%になれば1万100円となり、単純計算では700円の差が生じる。
もっとも、実際の販売価格が税率の引き下げ分だけ下がるかどうかは、事業者の価格設定などにも左右されるため、消費者の負担がそのまま7ポイント分減少すると考えるべきではない。
「8%→1%」で事業者の税務処理も変わる
今回の制度で見逃せないのが、消費者だけでなく、事業者側にも対応が求められる点である。
大綱案では、適格請求書などに記載する「適用税率」についても、特例税率を記載することとしている。
また、売上を基に仕入税額控除を簡便に計算する「簡易課税制度」※を選択している飲食料品の販売事業者にも対応が必要になる。通常は業種ごとに決められた「みなし仕入率」で控除額を計算するが、食料品の税率だけが1%に下がると、仕入れは従来どおり8%や10%の税率のままであるにもかかわらず、みなし仕入率をそのまま当てはめれば控除額が実態よりかなり少なく計算され、事業者の税負担が不自然に重くなってしまう。
そこで大綱案では、1%の特例対象となる飲食料品の売上について、みなし仕入率による計算に代えて、仕入税額控除の額を売上にかかる消費税額とまったく同額とする特例を設け、この部分の実質的な納税額を生じさせない措置を講じるとしている。
※簡易課税制度…消費税の納税額は本来「売上にかかる消費税額 − 仕入にかかる消費税額」で計算するが、中小事業者向けの簡易課税制度では、実際の仕入額を集計せずに、業種ごとに決められた「みなし仕入率」(例:小売業80%など)を売上税額に掛けて、仕入税額控除の額を簡便に計算する。
さらに、前年の納税額を基準として計算する中間申告についても、税率引き下げによって納税額が減少する事業者に配慮した特例を設けるとしている。
今回の減税は税率を8%から1%に変更するだけの話ではない。インボイス、簡易課税、中間申告、価格表示など、事業者の実務にも幅広く影響する制度変更となるということだ。
「1%」の次に待っている「就業者負担軽減支援金」
そして、今回の大綱案で注目したいのが、その先の制度だ。
大綱案では、食料品の消費税率を1%に引き下げる2027年度、2028年度の2年間を、2029年度の本格的な「給付付き税額控除」導入までの「つなぎ」と位置付けている。
そのために導入するのが「就業者負担軽減支援金」だ。この支援金は、単純に所得の低い人へ一律に給付する仕組みではない。
具体的には、税金や社会保険料を負担する一方で、児童手当などの現金給付を受け取っている人もいるという『所得再分配』の実態を踏まえて検討が進められている。そこで、税・社会保険料の負担額の合計から、受け取った現金給付を差し引いた額が、収入額に対してどれくらいの割合になるかという「純負担率」に着目し、この純負担率や所得の水準に応じて支援金の額を決める仕組みを予定しているようだ。
大綱案は、この制度について「本格的な『給付付き税額控除』を導入する第一歩」と明記している。
誰が支援金を受け取れるのか?
支援金は個人を単位として支給するようだ。対象として想定されているのは、諸外国との比較などから純負担率の改善が必要とされた「中低所得の現役勤労者」だ。だが、現時点で「年収○万円以下なら対象」といった具体的な所得基準は決まっていない。
大綱案では、前年の給与収入などから算定する「勤労所得」が一定の所得下限額を超えていること、前年の合計所得金額が一定の所得上限額以下であることなどを支給要件としている。
さらに、税・社会保険料の負担状況などを踏まえた「純負担基準額」も設けるとしている。単純に「低所得者への給付」と捉えると制度の趣旨を見誤りかねない。
狙いは、中低所得の就業者について税・社会保険料などの負担を考慮したうえで手取りを増やし、「働くことで生活がより良くなる」状態をつくることにあるようだ。
所得が増えると、支援金はどう変わるのか
大綱案では、支援金の額について、所得に応じてきめ細かく設定する考え方が示されている。
具体的な支給額や所得基準は今後決められることになるが、所得が増えれば一律に支援金が打ち切られるという単純な仕組みではなさそうだ。所得に応じて支援額を調整し、一定の所得水準を超えたところから支援額を逓減させる制度設計が想定されている。もっとも、具体的な所得下限額、所得上限額、支援額などは、今後の検討事項として残されている。
「年収の壁」による働き控えも対象に
今回の制度のもう一つの特徴が、「年収の壁」への対応だ。
大綱案では、就業促進を目的として、一定の要件を満たす場合に「就業促進特例加算」を設ける方向が示されている。これは、社会保険への加入などによって負担が増え、働く時間を増やしても手取りが増えにくくなるケースを念頭に置いたものだ。支援金によって税・社会保険料負担の一部を補い、就業時間を抑制するインセンティブを緩和する狙いがある。
食料品の消費税減税だけを見れば「物価高対策」であるが、その後に予定されている支援金制度まで含めて見ると、今回の政策は「働く人の手取りをどう増やすか」という税・社会保障制度そのものの改革を目指していることが分かる。
子どもがいる世帯には「こども加算」
支援金には、扶養する子どもがいる場合の「こども加算」も盛り込まれている。
大綱案では、19歳未満の居住者である扶養親族の有無や人数などを所得上限額の設定に反映させるとともに、扶養児童に対する加算を設ける方向を示している。
なお、本則は19歳未満の扶養親族を対象とするが、2027年度・2028年度については、経過措置として、16歳未満の扶養親族を対象とする扱いが示されている。
これによって、同じ所得水準であっても、子どもの有無などによって最終的な支援額が変わる仕組みとなる。
「結局いくらもらえるのか」は、まだ決まっていない
ここで注意したいのは、現段階で具体的な給付額まで決定しているわけではないという点だろう。
大綱案では、支援金の具体的な水準について、我が国と諸外国の純負担率・純負担額の比較や、類似制度の支給対象者の割合などを踏まえて検討するとしている。
また、所得下限額や所得上限額についても、税制や社会保障制度の状況、就業促進効果などを考慮して決めるとしている。
したがって現段階で、「年収○万円なら○万円もらえる」と断定することはできない。現時点で確定的に読み取れるのは、食料品の消費税を2年間1%に引き下げる制度と、中低所得の現役勤労者を対象とする支援金制度を組み合わせ、その先に給付付き税額控除を目指すという大きな方向性である。
2年間の「1%減税」は、給付付き税額控除への橋渡し
資料では、2029年度を「本格導入」の時期と位置付け、2027年度・2028年度については、飲食料品に係る消費税1%相当分の範囲で支援金制度を実施し、その後の本格導入へ円滑につなげる考えが示されている。つまり、今回示された案の本質は、単なる「食料品の消費税減税」ではない。
9月に『食料品消費税1% 減税×給付付き税額控除の真相』を刊行した矢内一好氏は「この大綱案は、今後作成される改正消費税法の内容を大筋で説明しているものであることから、消費税法改正の枠外となる財源、2年後の8%への税率変更、物価上昇に対する効果等には言及されていません。今回の消費税減税におけるこれらの論点は、国会における法案審議の過程で議論されるでしょうが、消費税の実務を担当する側として、1%になった場合の税務上の処理が最大の問題点であり、その点では、まだ不透明な部分があるとはいえ、社会保障国民会議の実務者会議の中間とりまとめからすると、相当に実務的な観点が考慮されています。今後、税制改正大綱、改正消費税法案とより具体的な内容が明らかになるものと思われます」と話す。
消費税を一時的に引き下げる政策から、税と社会保険料を負担した後の手取りを所得に応じて調整する政策へ――。その転換点として、今回の「1%減税」と「就業者負担軽減支援金」が位置付けられている。今後の焦点は、具体的な所得基準や支給額がどう設定されるのか、そして2029年度以降の「給付付き税額控除」がどのような制度として固まるのかに移ることになるだろう。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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