「今年からは、もう出さないね」孫への援助をやめた理由
「今年の夏休みも、みんなでどこか行く?」
長女の真由さん(仮名・45歳)からそう聞かれたとき、母の悦子さん(仮名・72歳)は少し迷ってから答えました。
「今年は旅行代、出さないことにしたよ」
悦子さんは夫を8年前に亡くし、一人暮らし。年金は月約16万円、預貯金は約1,600万円あります。住宅ローンを完済したマンションで暮らしています。
真由さんには中学生と小学生の子どもがいます。車で1時間ほどの距離に住み、孫が幼かったころから、夏休みや年末年始にはよく悦子さん宅を訪れていました。
悦子さんも、その時間を楽しみにしていました。
孫たちが来れば外食へ連れて行き、遊園地や水族館の入場料も出します。夏休みには家族旅行の費用を一部負担することもありました。
最初は数万円程度だった援助も、孫が成長するにつれて増えていきました。
中学校の入学祝いに10万円、塾の夏期講習に8万円、前年の夏には家族4人で出かけた旅行代として20万円ほどを負担しています。
「孫のために使うのは嫌じゃなかったんです。でも、年金生活になってからも同じように続けていいのかなと思うようになりました」
きっかけは、自宅の給湯器が故障したことでした。交換にはまとまった費用がかかり、その後もエアコンの買い替えが必要になりました。
今後は自分自身の医療費や住まいの修繕費も増えるかもしれません。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上で今後優先的にお金を使いたいものとして「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」を挙げた人は25.8%でした。一方、「自分や配偶者あるいはパートナーの医療・介護の費用」は47.5%に上ります。高齢期には、家族への援助と自分自身の将来への備えの両方を考える必要があります。
悦子さんは、孫へのお祝いをすべてやめたわけではありません。誕生日にはプレゼントを贈り、お年玉も渡します。
ただし、旅行代や塾代など、数万円から数十万円になる援助はやめることにしました。
真由さんは「分かった」と答えました。悦子さんは、孫たちは残念がるだろうと思いましたが、それで娘一家との付き合い方まで変わるとは考えていませんでした。
ところが、その年の夏休み。毎年のように来ていた娘一家から、帰省の連絡がありませんでした。
