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父が溶かした退職金【上巻】・【下巻】
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会社に入った補償金を「社長への返済」に
最初に登場するのは、会社が受け取った補償金が、その後、代表者のもとへ移っていったケースだ[図表1]。
滞納していた法人の代表者Aは、会社に対して貸付金債権を有していた。そんななか、会社が地方公共団体から収用に伴う補償金を受け取り、その資金が会社の預金口座に入金された。
ところが、その後、Aは会社から自らの貸付金の返済を受けた。補償金の大部分がAのもとへ移ったのである。
会社と代表者との間に貸し借りがあり、その返済を行っただけなら、直ちに問題になるとは限らない。しかし、このケースで国税当局が注目したのは、その「返済」に至った経緯だった。
国税当局は、Aと会社が通謀し、ほかの債権者の利益を害する意図をもって行われたものと判断。国は、会社の財産を不当に減少させたとして、詐害行為取消訴訟を提起した。
その後、法人は滞納していた国税を全額納付したという。
令和7年度には、国が原告となって滞納整理に関する訴訟を172件提起しており、そのうち詐害行為に関するものは55件だった。前年度の詐害行為に関する訴訟は37件である。
会社から代表者への資金移動についても、「社長への返済」という名目だけで終わるわけではない。いつ、どのような資金が、誰に、なぜ移ったのか。その結果として会社の財産がどうなったのかまで、国税当局は見ているということだろう。


