(※写真はイメージです/PIXTA)

昭和20年代後半でも、日本人男性の平均寿命は60歳前後、女性でも65歳前後ですした。54歳の磯野波平さんは立派な高齢者、「おじいちゃん」でした。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『70歳からの老けない生き方』(リベラル社)で解説します。

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感情を老化させる3つの原因

では、原因を一つずつ見ていきましょう。

 

①脳の前頭葉の萎縮

 

年をとるにつれ、脳は前のほうから縮み、前頭葉から萎縮していきます。前頭葉は高次脳機能のうちの、思考や判断などを司るところです。前頭葉の機能を低下させないためには、前頭葉に刺激を与え続けることです。具体例は後述しますが、生涯現役で仕事や趣味の活動をし続けることです。脳トレによくあるような簡単な足し算も脳の血流を増やすので効果的です。難しい本を読むより簡単な計算のほうが前頭葉への刺激となります。

 

②動脈硬化

 

年をとるにつれて、だんだん血管の壁が厚くなり、血管の内腔が狭くなってきます。血管の内腔が狭くなると脳に酸素が届きづらくなり、意欲の低下が生じやすくなります。予防としては、バランスのとれた食生活と適度な運動が大切です。

 

③神経伝達物質・セロトニンの減少

 

セロトニンは、幸福感ややる気(意欲)につながる「幸せホルモン」としてメディアで紹介されたりしているので、聞いたことがある方も多いのではないかと思います。

 

「腸内細菌」がクローズアップされるようになって10年くらいたつでしょうか。雑誌、新聞をはじめとする多くのメディアで腸の重要性が注目され、善玉の腸内細菌のエサとなるヨーグルトや納豆といった発酵食品の売れ行きが急増するなど、大きなブームになりました。

 

多くの人々の関心を集めた背景に、腸内細菌のもたらす効果が「腸だけではなく脳にまで及ぶ」という点があったように思います。「下半身に存在する腸が頭の脳に影響を及ぼす」ということに驚かれた方も多いかと思います、それは、セロトニンという神経伝達物質が腸内細菌の働きで作られるからです。

 

腸の中の細菌類がバランスよく保たれていれば、幸せを感じやすくなるセロトニンというホルモンが多く分泌される、というわけです。セロトニン生成の材料となるたんぱく質を摂ることも大事です。

 

また、セロトニンは、日光を浴びることで分泌が活性化されます。朝の散歩など、太陽の光を浴びながら軽い運動をすることはセロトニンの減少予防に効果があります。

 

■女性が高齢期に活動的になる意外な理由

 

70歳くらいになると、生活全般において意欲を失くしてくる男性が増えてきます。出かけるのが面倒、人と会うのが億劫、雑誌や本を読まなくなる、着るものに頓着しなくなる、部屋が片付けられない……。中年以降の男性に“ショボクレ感”が強いのは、男性ホルモンの量が大きく関わっていると考えられます。

 

ちなみに、女性の場合は閉経後に男性ホルモンが増えます。レストランやカフェなどで中年の女性たちのグループが楽しく歓談している光景をよく目にしますが、男性ホルモンが増えると人に興味をもつようになり、人付き合いがさかんになるのです。

 

男性ホルモン=女性を好きになるホルモンではありません。男性ホルモンは「人にやさしくなる」という作用もあります。

 

■感情の老化は意欲の低下につながる

 

早い人は50代から、多くの人は70代になると、いろいろなことを実行するのが面倒になり、日常生活の中で運動量もぐっと低下してきます。1日に5000歩くらいは歩くことを心がけていた人が、ウォーキングの習慣を失くしてしまえば、運動機能や脳の機能の低下は目に見えています。つまり、意欲の低下が心身の老化につながっていくのです。

 

ものごと一般に対する意欲が低下してくると、ときに「老人性うつ」といわれる状態を招きます。うつ病のレベルではない場合は、精神科に診てもらったり、薬を服用したりすることはないことも多いのですが、なんとなく「ボーッとしている老人」になってしまいます。そうならないように、感情の老化予防を始めましょう。

 

和田 秀樹
ルネクリニック東京院 院長

 

 

※本連載は和田秀樹氏の著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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