(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナによる自粛生活の長期化が高齢者の心身への影響が懸念されています。75歳以上の「フレイル健診」で全国約350万人が要介護状態の入り口に立っています。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『70歳からの老けない生き方』(リベラル社)で解説します。

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なぜコロナ自粛が人の老化に影響するのか

■コロナ禍に老化スピードが早まる人が増加

 

新型コロナウイルス感染症は、高齢者の心身の健康に大きな悪影響を及ぼしました。外出自粛の大号令のもと日本全体が自宅に隔離されているような状況が続いています。「生命が最優先。それを軽視するのは人にあらず」的な意識が蔓延し、散歩すら自由にできなくなりました。

 

心身の活力維持のために、運動や社会参加が勧められてきた高齢者に、これは重大な影響をもたらしつつあると私は見ています。

 

一部の高齢者が楽しみにしていた「昼カラオケ」などはもってのほか。飲食店の営業も自粛となり、いままで外でお酒を楽しんでいた高齢者は独り自宅で飲酒する「家飲み」が増加したのです。独居の高齢者は自宅にこもり、孤独を感じる生活が続いていると思います。

 

その結果、ワクチン接種後に外出をするようになった高齢者に「少し歩くだけで疲れるようになった」「カラオケをしてももう楽しくない」などといった“自粛後遺症”が多く見られるようになりました。「外に出なくなって歩けなくなった」「ぼけたようになっちゃった」という患者さんも実際にいます。

 

100万人、200万人という単位でフレイルという虚弱状態や要介護になる高齢者が出てくることが十分、予想されます。

 

コロナだから自粛しなさい、マスクをしなさい、アルコールで手指消毒をしなさいというのは、一見、害がないことのように思われますが、医療行為といっていいものです。どんな医療行為にも少なからず副作用というものがあります。そのことに対する告知や対策を国や行政は国民にすべきでなかったかと私は思っています。

 

特に高齢者は、自粛ばかりを要請し、国民の自由を無視した国や行政のいわば犠牲者になっています。政府が頼りにならない以上、高齢者は自分の心と体は自分で守らなければならない事態となりました。それを怠れば不健康な状態に陥っり、いきいきと人生の後半の生活を送ることができなくなります。

 

■いまのあなたの意欲度は?

 

それでは、いまの自分の「意欲度チェック」してみましょう。最近の生活の中で以下の項目のうち、いくつ該当する「YES」があるでしょうか。

 

①最近、宅配の新聞以外に新聞や雑誌を買ったか
②旅行や外食をしたい気分になっているか
③友人、知人と積極的に会いたい気持ちになっているか
④趣味を再開したいか

 

1つも「YES」がないようだと、要注意。自分でしか己の意欲は高められないことを改めて再認識したいものです。

 

■要介護一歩手前。知っておきたいフレイル

 

前項で少し触れましたが、最近、フレイルという言葉をよく見聞きするようになったかと思います。自粛の副作用で最も増えるであろうものがこのフレイルです。

 

フレイルとは「虚弱」という意味で、年をとって身体や脳の機能が衰えつつあり、心身の活力が低下した状態です。具体的には「歩くスピードが遅くなった」「お茶などを飲むとむせる」「昨年と比べて外出回数が減った」などが挙げられます。健康と要介護の間で、また健康の状態に戻ることもできる状態です(図参照)。

 

 

厚生労働省は2020年から75歳以上の人を対象に「フレイル健診」を実施していますが、現在その該当者は全国で約350万人。心身が衰え、要介護状態の入り口に立たされている人は、こんなに多いのです。

 

フレイルの状態を判断する目安としては、左記のとおりです。

 

●体重の減少(意図していないのに自然に減っている状態)
●疲労度の増加(散歩の距離を少し増やすと疲れる)
●活動量の減少(出かける回数が減っている)
●動作が遅くなる(歩行速度の低下など)
●筋力の低下(ペットボトルの蓋が開けにくい)

 

このうち3項目以上が該当したらフレイル、1~2はフレイルの前段階、ゼロは健常となります。3以上の人は年齢を問わず心身の健康状態をチェックすべきで、進行速度が速い場合には軽度の脳梗塞や心不全、あるいは腎機能の障害といった病気が隠ていることがあります。

 

心の面でもフレイルの状態が続き、さらに悪化してくると周囲から「認知症では?」と思われることが多くなってきます。物忘れが多くなると、本人や家族は認知症を疑うケースが増えてくるのですが、私の印象では60代で認知症と思われる人の7~8割、70代では約半分は認知症ではなく、老人性うつ病です。

 

次ページ一般的に認知症は症状がゆっくり進む

※本連載は和田秀樹氏の著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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