(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症で脳萎縮がかなり進んでいるのに、理路整然と話し、認知症の症状がほとんど見られない人がいます。反対に、脳萎縮は目立たないのに一日じゅうボーッと一点を見つめている方もいます。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『70歳からの老けない生き方』(リベラル社)で解説します。

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活動し続けることが最高の老化予防薬

■生きがいの効果

 

生きる意欲を減退させないために必要になってくるのが生きがいとなる仕事や趣味です。

 

私は精神科医、著述家、映画監督といった肩書きで仕事をしていますが、60歳を過ぎて改めて「現役を続けやすい仕事を持ってよかった」と実感しています。本業は?と尋ねられることもありますが、いくつもの仕事ができることは本当に幸せなことです。

 

精神科医になったとき、先輩の医師からこんなことを言われました。

 

「精神分析の学会には70代、80代の医師が多く顔を出している。一生、楽しめる」

 

その言葉を昨日のことのように思い出します。

 

意欲を持ち続け、感情の老化を予防するには仕事や趣味、家事から引退しないことが一番です。引退というとやや大げさかもしれません。生涯現役で仕事や趣味、ボランティア、家事にいそしむことが最大の老化予防につながるのです。

 

サラリーマンを定年退職後、経済的な裏付けさえあれば、趣味に生きることは一つの生き方でしょう。

 

現役時代にはさまざまな制約があった趣味の時間を思う存分に楽しむことは、老化予防の一策となるはずです。

 

やはり、仕事を続けることの老化予防の効果は大きいです。選り好みさえしなければ、職安に足を運んだり、シルバー人材派遣に登録したりすれば、就ける仕事は見つかるのではないでしょうか。「上司、同僚といった第三者に何かをやらされる」という状況の刺激が体と脳を活性化させます。

 

馴れない環境で仕事やボランティア活動をすると、新たなストレスが生じてきますが、自分でコントロールできる程度のストレスならば「買ってでも体験する」が正解です。

 

リタイアした生活に突入すると、当初はストレスフリーの状況に感謝するようになります。満員電車に乗らず、気の合わない上司と顔を合わせることもありません。「自由はなんて素晴らしいんだ!」と快哉を叫ぶ人もいるはずです。

 

ところが、それは束の間。ストレスのない生活を続けていくと、それ自体がストレスになってきます。その結果、小さなことにイライラするようになり、配偶者や子供に嫌われたりします。家の中では浮いたような存在になり、家族はいるのにろくに会話もしないような高齢者が少なくありません。

 

仕事やボランティアなどに出かけず、毎日家にいられたら家族から疎ましく思われるのは当然です。そんな人にならないためにも、外に出ようではありませんか。

 

■人生後半は「病気は道連れ」と心得る

 

体調の管理も、定年後のセカンドステージで気をつけなければならないポイントです。私のことを少しお話ししますと、いま心不全の診断を受けています。心不全では最も一般的な薬剤として使われる利尿剤を飲んでいて、体内から余分な水分が排出されることによって心臓の負担はかなり軽減されています。

 

ただ、その副作用の一つとしてトイレが異常に近くなっています。1時間程度なら当たり前、ひどいときは20分くらいで尿意を催すのですから、日常生活にも支障をきたしています。自宅で仕事の場合は問題ないのですが、外出先での突然の尿意にはヒヤヒヤものです。

 

特にコロナ禍ではコンビニをはじめトイレを閉鎖しているところが多く、病気になってみないとわからない不都合が日常生活にたくさんあることを実感しています。高齢者や病気を持つ人が活動的に生活できるバリアフリーな街になることを望んでいます。その前にいまのオムツの性能は凄く良いので、オムツをはくこともためらわず外に出ようという、気持ちの転換も大事です。

 

その他にも、この数年患っている糖尿病や最近は五十肩にも苦しめられました。それらの病気を克服した、とはとても言いがたいのですが、どのように付き合っているかを述べていきたいと思います。

次ページ降圧剤の継続使用を避けるような生活

※本連載は和田秀樹氏の著書『「65歳の壁」を乗り越える最高の時間の使い方』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

70歳からの老けない生き方

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