7年間で約500件の不動産取引の経験を持つグランドネクスト株式会社代表・小島優一氏は、物件の「共有名義の危険性」を指摘しています。本記事では事例をもとに、離婚時の財産分与において、共有名義の家やマンションがどのようなトラブルを引き起こすのか、見ていきましょう。

4000万円のマンションめぐり共働き夫婦が紛糾

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Aさん(39歳):都内の大学を卒業後、大手企業に就職。妻と娘の家族3人暮らし。数年前に都内の中古マンションを4000万円で購入。

 

妻(35歳):娘を30歳で出産後、育休から復帰するも、会話すらない夫婦仲に疲れ果て、離婚を決意。養育費・財産分与をできるだけ多く取るために争う姿勢。

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(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

10年ほど前、貯金すべてを頭金にして、夫婦共有名義で都内のマンションを購入したAさん夫妻。共働きですが、年収はAさんのほうがかなり上でした。新婚当初こそ夫婦仲はよかったものの、年々会話は減少。娘が生まれたあとも、Aさんは仕事に追われて家事や育児に参加できない日々が続きます。

 

あきれ果てた妻は、離婚を切り出すことにしました。

 

もちろん離婚の原因はお互いにありましたが、妻は「もらえる分はもらっとかなきゃ」と、Aさんが不利になるような証言を並べたて、財産分与では半分以上の額を要求してきました。あまりの言い分に唖然としながらも、「いざこざは早く終わらせたい」と考えていたAさんは、妻の要求を呑んでしまったのです。

 

離婚に伴う財産分与の対象となるものは、ほんのわずかな貯金と、ローンが残っているマンションです。

 

というのもAさん、コロナの影響で会社の業績が不調となり、残業がカットされ、賞与もなくなっていました。マンションを購入してから現在までローンはすべてAさんの給与から支払っていたため、貯金はみるみる減っていき、離婚時に残された貯金はほぼゼロになってしまったのです。

 

今の給与では、住宅ローンと新しい住居の家賃、そして養育費を同時に支払うことは困難です。Aさんはマンションを売却しようと考えていましたが、妻は応じません。結局、共有名義のため勝手に売ることもできず、Aさんはマンションの名義をすべて妻にすることに同意しました。その代わり、養育費を支払わないことで決着がついたのです。

 

残っているローンの額と、現在そのマンションが値上がりしていることを鑑みると、Aさんは妻との共有名義でマンションを売却できなかったために、財産分与で多額の損をしてしまったことになります。

 

「マンションを購入するとき、自分だけの名義で買えるものにしておけばよかった……」

 

Aさんが今も後悔していることは言うまでもありません。

解説:夫婦共有名義で購入した家…離婚時の対応は?

離婚件数が年間で20万8496組(2019年)にもなる現在、共有名義で家やマンションを購入した夫婦であっても、離婚してしまうケースは少なくありません。

 

実際、夫婦共有名義で購入した家やマンションがどのようになるのか……と悩み、筆者のもとへ相談に来られる方もいらっしゃいます。

 

本記事では、上記のようなお悩みや、ローンが残っていたり、名義を変更したりする場合の対処法について解説します。離婚時の財産トラブルが気になる方はもちろんのこと、家やマンションを夫婦共有名義で購入しようとしている方もぜひ参考にしてみてください。

 

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