不動産購入の本来の目的を忘れてはいけない
家主業の基本をある程度理解したら、次は不動産購入の基本について考えていきたい。
まず、購入するときにどんな条件で不動産を探したらよいだろうか。最低限検討するべき点は、 「立地」「建物の構造」「建物の種類」「建物の築年数」「建物の間取り」「土地の権利」「利回り」、そして「価格」だろう。
この連載ではそれぞれの条件について検証していくが、その前に不動産購入時に忘れてはいけない大事なことを確認しておきたい。それは、「不動産を購入する目的」だ。本来の目的を見失ってしまい、資産を減らしかねない事態に陥るケースもある。
いざ収益不動産を買おうと思っても、買いたい不動産はそう簡単に手に入るものではない。欲しいと思った不動産がなかなか買えないと、永遠に買えないのではないかと不安になり、焦る。本来、焦りは禁物だが、なかなか買うことができないと、いつの間にか、目的は収益性の高い「いい不動産」を買うことではなく、買うこと自体が目的になり、徐々に「買える不動産」に買い付けを入れるようになる。そのような状況に陥ることを「買いたい病」に罹るという。「買いたい病」に罹るリスクは、1棟目はもちろんのこと、2棟目も同様だ。
早く事業的規模にしたい――。こんな思いが募り、かつて「買いたい病」に罹ったと振り返るのは神奈川県在住の高田修さんだ。1棟目は全4戸のアパートを購入し、高収益でうまくいっていた。そこで家主業の旨味を知ったことから、税制優遇措置があり、事業的規模といわれる5棟10室まで早く規模を拡大したいと思ったという。
1棟目は、土地が高くて建物が安かったので、2棟目は、減価償却が取れるように、建物が高くて土地が安い物件を探した。その結果、郊外の土地が安い地域に全10戸の新築デザイナーズアパートを購入。
ところが、立地が悪かったことから、なかなか満室にならず、結局、2年で売却。運良く不動産の相場が上がっているタイミングだったので、購入金額とほぼ同じ額で売却できたが、時期が悪ければ、資産はマイナスになっていただろう。
「新築デザイナーズアパートであれば、よほどのことがない限りうまくいくだろうと思ったのは間違いだった。いい勉強になった」と話す。