不動産投資は「誰でも」「簡単」「お得」か?
1万人の家主から学んだ成功の極意
読者の皆さんの中には、「不動産投資こそ有効な資産運用」との確信を深められるだろう、と期待して本書を手にとっていただいたのに、「不動産での資産運用はとても難しそうだ」と諦めてしまう人もいるかもしれない。
近年、融資の審査が緩和されていたこともあり、「不動産を購入して資産運用」は、「誰でも」「簡単」「お得」というイメージがかなり浸透してきていたため、これまで少しでも「不動産投資」についての情報に触れてきた人であれば、なおさらがっかりしたかもしれない。資産運用に経営の意識が必要なのか。それは資産運用の域を超えているのではないか。そんな疑問も持たれた方もいたのではないだろうか。
しかし、本連載は、家主業について「やらない方がいい」と言いたいわけではなく、むしろ資産を増やす方法として有効だということを伝えたくて書いた。
私はこれまで多くの家主に会ってきて、家主になったことで家族関係が良くなった、自由な時間が増え趣味を楽しめるようになった、余計なストレスを感じずに生活できるようになった、そして幸せを実感しながら生活をしているという話も多く聞いてきた。経済基盤が安定すると、人は心に余裕を持ち、豊かな人生を送れるのだということを、経営が順調な家主に会うと感じてきた。
家主業のメリットは、基本的に従業員を雇うことなく、一人で経営できることだ。組織で、時には理不尽な仕事もさせられる経験を持つ多くのサラリーマンにとっては、自分の判断で経営できる家主業は、精神的ストレスが軽減されると感じられるだろう。従業員を雇う代わりに、多くの会社と取引をしながら、賃貸住宅の経営に当たる。特に管理会社は、まるで外部スタッフのように、わずか家賃収入の5%という管理料で動いてくれるのだ。こんないい商売は他にはないだろう。
それこそひと昔前は、大家さんというと「不労所得が得られる」といわれた。現在は人口が減少し、空室は増え、入居者の層も多様化し、世の中が複雑化したことで、経営の難易度は確実に上がっている。不労所得といえるほど楽な仕事ではなくなった。それでも、「住」という生活基盤を扱う商売なだけに、やり方さえ間違わなければ、本来、大損をするということはない。大損をして失敗する人たちの多くは、やり方を間違ったからだ。
失敗する人の共通点は、正しい知識を身につけていないこと、経営者としての自覚を持っていないこと、欲の皮が突っ張ってしまったことだろう。