進学や結婚などを機に親の元を離れる人が多くいますが、一方で、ずっと親元を離れないケースも珍しくはありません。そこには家庭ごとにさまざまな事情があるようです。
お母さん、もう無理、ごめんね…。〈月収42万円・55歳〉のひとり娘、〈年金月14万円・75歳〉母を実家に残し、初めてひとり暮らしを始めた切実事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

実家を出るタイミングを逃した50代女性

東京都内にある実家で、10年前に父が亡くなってから母・信子さん(75歳)とふたり暮らしをしている上田恵子さん(仮名・55歳)。これまで一度も実家から出たことがなかったといいます。

 

Q.実家を出て暮らしているに聞いた「実家を出たタイミングとは?」

・進学…33.8%

・就職…20.2%

・結婚…15.4%

・同棲…7.0%

・自立したいと思ったとき…4.0%

・経済的余裕ができたとき…3.2%

・転職…3.0%

出所:株式会社AlbaLink

 

恵子さんが実家を出なかった理由。それは母・信子さんの束縛が強かったから。1980年代前半、大学進学率は男性が30%程度、女性が10%程度の時代。そのようななか、恵子さんは大学進学。経済的な負担を考えて、家を出るという発想がありませんでした。就職をする際に自立しようと実家を出ようかと考えましたが、「若い娘のひとり暮らしなんて危険。結婚するまでひとり暮らしは認めない」と反対をされたといいます。

 

【20歳未満の第1子誕生の実情】

1980年:667,675人/13,553人(2.0%)

1985年:601,969人/16,413人(2.7%)

1990年:531,628人/16,084人(3.0%)

1995年:567,519人/14,721人(2.6%)

2000年:583,200人/18,169人(3.1%)

2010年:509,732人/12,102人(2.4%)

2015年:478,100人/10,549人(2.2%)

2020年:392,538人/6,181人(1.6%)

2023年:338,902人/3,959人(1.2%)

出所:厚生労働省『人口動態』

※数値左より、第1子となる子の数/そのう母親が20歳未満の子の数(第1子誕生の母が20歳未満の割合)

 

さらに恵子さんの交際相手には厳しいチェックが入りました。

 

――主に年収ですね。両親は若いときに結婚したので、経済的に苦労した……そんな経験から、とにかくどれくらい給与をもらっているのか、厳しかったです。「こんな給与では娘をまかせられない」と

 

何度か結婚を視野に入れた交際はあったものの、最終的に母親の猛反対により結婚話はなくなり、いつの間にか50代、さらには定年間近になっていました。

 

――父が亡くなり、母も78歳。今後、介護が必要になるかもしれないとか考えると、実家を出るという選択肢はありませんでした