賃貸経営には大きく3つのステージがある
「借金完済までは税金と金利との闘いだ」
多額の借り入れをして物件を購入する場合は慎重にシミュレーションを重ねることで、購入後の賃貸経営をより負担なく実行できる。逆に、あまり考えずに購入してしまうと、買ったはいいが、その後の経営が苦しくなり、本業あるいは自身の生活にも影響を及ぼす事態になりかねない。本書で何度も紹介している「かぼちゃの馬車」事件の教訓を忘れてはいけない。多額の借り入れをして始める家主業で確実に資産を増やすためには、不動産を精査する力が重要だ。
「賃貸経営は借入金の返済が終わるまで、税金と金利との闘いだ」
こう話すのは、元メガバンク、外資系証券会社の債券トレーダーで、在職中に家主業をスタートし、現在、アパートとビルを6棟所有する川村龍平さんだ。専業家主の傍らキャッシュフロー経営をテーマにしたセミナーを数多く行っている。
近年、サラリーマンで不動産を購入し、賃貸経営をする人たちから資金繰りに関する相談が増えているという。その中でも多いのが、表面利回りを見て、安易に購入してしまったために資金繰りが苦しくなってしまうケースだという。
元利均等返済で融資を受けると、スタート当初は借入金利息の経費化で所得を圧縮できるので手元資金が残りやすいが、返済が進み徐々に利息が減少してくると、不動産所得の経費が減り、所得が増えて税金が上がり、資金繰りが苦しくなる。その厳しい時期を乗り越えて完済すると、空室対策等の本来の賃貸経営に集中することができるようになり、ここで初めて家主業の妙味が感じられるのだ。
川村さんは、「賃貸経営には大きく3つのステージがある」という。
第1ステージは、「借入金大」の時期で、税引き後キャッシュフローに細心の注意を払いながら、細かい調整が必要な時期だ。
第2ステージは、借入金の返済が進む中で、税引き後キャッシュフローがますますタイトになってくる最も難しい時期。前述の「デッドクロス」を迎えてから借入金返済が終わるまでの時期になる。
そして最後の第3ステージは、借入金返済が完了する時期。税金は増えるものの、トータルのキャッシュフローは潤沢になり、ようやく満室経営を目指す本来の家主業ができるようになるというわけだ。