特集 会社売却(株式譲渡)の方法・手続きの流れとは

会社売却(株式譲渡)の方法・手続きの流れとは

経営者は会社を継続するために、あらゆる選択に迫られることが多いでしょう。その中で、後継者や第三者に会社を引き継ぐという経営判断をすることがあるかもしれません。以下では、会社売却(株式譲渡)の方法や手続きについて紹介します。

 

■会社を売却する(株式譲渡)とは

株式譲渡とは、売り手側となる企業が保有する株式を買い手に譲渡することを言います。法人格ごと譲渡するため、経営権も移ることになります。したがって、一部の事業を譲渡する事業譲渡とは意味合いが異なります。株式譲渡は、売り手と買い手の両者にとって、手続きが容易で、持ち株比率の設定が柔軟というメリットがあります。株式譲渡は、株主が変わるということであるため、事業も継続され、会社の資産や従業員の雇用契約も引き継がれることが一般的です。中小企業が、円滑に事業承継するためのM&Aの手法として用いられます。

株式の譲渡は、原則として自由に行うことができ、株主の変更は定款の変更や登記事項に該当しないことから、法務局への届け出も不要となっています。しかし、自由に株式の売買ができるのは、上場会社等の公開会社です。ほとんどの中小企業は非公開会社に当てはまるため、すべての株式に譲渡制限に関する規定がある、「株式譲渡制限会社」となっているケースが多いと言えるでしょう。

 

■株式譲渡の方法・手続きの具体的な流れは?

譲渡制限会社であることを前提とした、株式譲渡のおおまかな流れは以下の通りとなっています。


1.譲渡の承認
譲渡制限があるため、株式譲渡人は会社から承認を得るために、譲渡承認の請求を行います。


2.株主総会の招集、株式譲渡の承認を決議
会社の定款に記載されている、「取締役・代表取締役・株主総会・当該会社」等の譲渡承認を指定する機関において、株式譲渡の認否を決定します。なお、会社は株主から株式譲渡の請求があった日から2週間以内に認否を通知しなければなりません。会社は請求を受けたら、臨時株主総会などを開催して株式譲渡の承認について決議を行います。


3.譲渡契約
会社からの承認が得られれば、譲渡契約を締結して株式の譲渡を行います。なお、不承認となった場合は、株式を売却することはできません。決議の内容によって異なりますが、会社または会社が指定する買い取り人に売却することになります。


4.株主名簿の書き換えなどを請求
株式の譲渡が完了したら、株式を譲り渡す側と、譲り受ける側の両者で、会社に対して株主名簿の書き換えを請求します。会社は株式名簿を書き換え、それに合わせて譲受人が株主名簿記載事項証明書の発行を請求、さらに会社が譲受人に株主名簿記載事項証明書を交付すれば、手続きが完了します。

 

■株式譲渡をする上での注意点は?

経営者の中には、株主の人数が少ない、家族経営だからということで、株主総会議事録をはじめとする必要書類を作成するだけで、株主総会の開催をしなくても良いのではと考えてしまいがちです。しかし、関係性が良好だったとしても、相続発生時にトラブルに繋がる可能性もあるため注意が必要です。法律に従って決議が行われていないと、決議事項そのものが無効になる可能性もあります。

また、株式譲渡は法務局などの役所などが関わらない分、手続きに漏れが生じる可能性が高くなります。法律に沿った適切な対応が求められると言えるでしょう。

 

株式を譲渡するということは、企業にとって大きなイベントであり、適切に対応をとる必要性が高いと言えます。書類の準備や手続きを円滑にするためにも、専門家やコンサルティングに適宜相談しながら進めると良いでしょう。

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